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黄金の道   ~エルとアレクの物語  作者: 長尾 時子
第九章 悲しみの葬送
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282. 悲しみの葬送

「あれが第二王子アレキサンダーか。グレゴリウス司祭、残念だったな。お前の企みは潰えた。それに、あの人なら化け物リッチと充分に渡り合える。お前の奉る教皇ザビエルともな」


サイード王子は心底おかしそうに笑った。これで十分だ。何の憂いも無くあいつらの元へと逝ける。アレクが去った後、ケレス分院で拘束されながら彼は思った。


そろそろ夜明けが近づいてくる頃にアレクがセイガと共に戻って来た。

「アレク、向こうはどうだった?」

「ああ、間に合った。ケイダリア公を討伐できたし、これで王家も一安心だろう」

「それでグレゴリウス司祭なんだけど・・」

「彼は自分の罪を購うべきだと思う。いろんな意味でね」

「人々を実験台にしたり、死者を冒涜したり、やはりこれ以上罪を重ねさせることは出来ないわ」

エルはそう言って、グレゴリウス司祭に向き直った。

「せ、聖女様。お慈悲を。貴女の言うことなら何でもします」

グレゴリウス司祭はエルにすがったがそれを見たウィルが口をはさむ。

「お前はすがってきた人々を助けてやったのか。自分達の為にどれだけ多くの人々に苦しみを与えてきたんだ」


「グレゴリウス司祭、闇ギルドの者達を消滅させます」

エルがペンダントを握ると赤い光が部屋の中に満ちた。グレゴリウス司祭も闇ギルドの者達も崩れ去り、一握りの灰と化した。


「さて、サイード王子、貴方はどうしたい」

アレクは大人しく拘束具に捕らわれたままのサイード王子に目を向けた。


「私はとうに死んだ人間だ。リッチによって生かされていると言ってもいい。この先、生き永らえたとしてもまた同じように悪事に使われるのは目に見えている。出来れば、仲間と共に眠りたい。この街へ来る前に仲間達を洞穴の中に残してきた。そこで安らかに眠りたい」

「故国に帰らなくていいのですか」

「カラード帝国は今の皇帝がいなくなった後、荒れるだろう。何しろ世継ぎが18人もいるのだから。そんな荒れた地で眠るより、この穏やかな国で休みたい」


「分かりました。ではその仲間の元へ案内してくれますか」

「ありがとう、アレキサンダー王子。この国は良い国だな」


翌朝、アレクとサイード王子一行は例の洞穴に向けて出発した。


2日後、その洞穴には綺麗に並べられた遺体があった。アレク達は持参した棺桶にその遺体達を丁寧に納め、サイード王子の指示のもと、各自名札を付けて行った。最後にサイード王子がその棺桶に入る。

エルは鎮魂歌(レクイエム)を低く歌い出した。青い炎が棺桶を包み込む。するとサイード王子の胸の辺りにあった魔石の色が落ちて行き透明になる。


サイード王子は最後にうっすら笑って消えて行った。





ーーー聖ピウス皇国教皇庁


「うっくっ」突然、パウロ司教が胸を押さえて倒れ込んだ。

「パウロ司教、どうしたのだ。まさか・・」

ザビエル教皇が青ざめた。そこへリッチが慌てて教皇の元へとやって来た。

「サイード王子の反応が消えた。どういうことだ。失敗したのか?」

ザビエル教皇がパウロ司教をいたわりながらもリッチに鋭い視線を投げかける。

「どうやらそのようです。今し方、グレゴリウス司祭も痕跡が消えました」

「それでは純粋な魔石の採取は絶望的になったということか・・」








ここまで読んで頂きありがとうございます。これにて第九章悲しみの葬送を終わります。もし面白かったと思っていただいたら評価ボタンをお願いします。今後の励みになります。後、サイード王子の反応が消えた件ですが、ケレスを出発した時点で聖魔法を掛けられ、リッチとの繋がりを遮断しています。

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