280. 激戦の末 ②
「ケイダリア伯爵!ケイダリア伯爵が・・」
サイード王子がグレゴリウス司祭に問いかける。
「お前、一体あの子に何をした」
「わ、私はあの子に良かれと思って・・」
「グレゴリウス司祭、幼い子供をヴァンパイア化するのは禁じられていたはず」
エルは鋭い視線をグレゴリウス司祭に向けた。
「幼い体と知能が噛み合わず、後に崩壊してしまうことは分かっていたはず」
エルの目が赤く光り出す。
「聖女様、お許し下さい。私はあの子が望んだ事をしたまでで・・」
「話なさい。貴方達が何故この国に来たのか。そして貴方に命令したのが誰なのか」
グレゴリウス司祭は抗うのを止め、素直に話し出した。
「ザビエル教皇様は貴女様を大変恐れておいでです。聖ピウス様もお目覚めにならない今、私達はどうしようもない焦燥感に陥っていたのです。そんな時、魔族の者が私達に接触を図ってきました。そして魔石を使えば聖ピウスの蘇生が叶うかもしれないとのことでした。早速、私達は魔石を集め高純度の魔石を聖ピウスに埋め込みました。けれど蘇生されません。そんな時、純度の高い魔石鉱山が結界の向こう側、シュトラウス王国にあるという情報があり、シュトラウス王国への侵攻をパウロ司教の元、準備いたしました。また、本当に蘇生できるのか確証を得るために、実験を繰り返したのです。その結果、サイード王子が闇魔法を操る素晴らしい屍食鬼として復活を遂げました。そこで我々は、闇ギルドを通じてケイダリア一門が粛正された経緯を聞き及び、魔石にて死者を復活させ、シュトラウス王国を乗っ取ろうと画策したのです」
「でも、魔石だけで死者は生き返ることはないんでしょう?」
「それは実験により判明したのですが、魔石に闇魔法の魔力をいれると復活します。サイード王子は魔族のリッチと言う者の魔力を注入して復活させました」
「じゃあ、あの骸骨軍団は」
「サイード王子のお力です」
「成程」と言って、エルはサイード王子に目を向ける。
「聖女様、私のことはいくらでも罰して貰って構いませんが、それよりも気になるのが王城です。ケイダリア公が骸骨軍団を率いて王城へ向かいました。送った人数に制限を掛けましたが、心配です」
サイード王子はエルの目を見て訴えた。
「どの位、どこへ送ったのだ」すかさずアレクが質問した。
「貴方は」
「アレキサンダー第二王子殿下だ」
「ならば話は早い。送った人数は14,5人。場所は王城の地下。地下牢がある場所だ。彼らは王城の者を襲い成り代わることが出来る。成り代わった者が、王を害することがあるやも知れぬ」
「分かった。エル、ここを任せてもいいか。セイガ、それとレイも共に行くぞ」
アレクはセイガを呼び、レイモンドを連れて魔方陣を出し、王城へと向かった。