28.ペンダントの記憶 ⑲
裁きの日
その日に全ラルフ王国の貴族が集められた。そしてイヴァン王、マール公爵家、カイゼル侯爵家、その一族郎党、及び加担した貴族家の処罰が決まった。マール公爵家、カイゼル侯爵家は王家の簒奪により、お家は取り潰し、その遺族郎党まで死刑、加担した貴族家は領地召し上げの上、爵位返上と決まった。
そして満場一致で次期王にヴィルヘルム・フォン・サルデスが推された。
「諸君、ありがとう。私は忌まわしいことがあったこの国の名を変えようと思う。国名は『ユークリッド王国』だ。新しい国に幸あれ!」
「幸あれ!」とすべての人々が唱和した。
前王族らの処刑は粛々と進んでいった。
王母エリザベスはうつろな目で処刑の順番を待っていたが、ふとある人物に目が止まると顔が驚愕に染まった。
「リリアナ!なぜお前がここにいる!お前は死んだはずだろう。それとも地獄のそこからわたくしの処刑をあざ笑いに来たか」と喚いた。
その目はまっすぐに『ユイ』を見ていた。
ユイは訳がわからずとまどっていたが、新王ヴィルヘルム・フォン・サルデスは心の中で納得していた。
「ユイ殿、確認したいことがあるので後で私のところにシン殿と来てくれないか」
シンとユイが王の居間に出向くと王は人払いを命じ二人と向き合った。
「実は前から気になっていたのだが、ユイ殿はどちらの生まれだ」
「山奥の村だったので、どこにある村かは、追い出されたのが子供の頃でよく覚えてません」
「ご両親は」
「はい、両親とも健在でした。でもよく考えると兄二人と家族の誰も私のような金髪・紫目はいなかったと記憶します」
ヴィルヘルム王は優しい目をして彼女に言った。
「確証はないが恐らく貴女は攫われた第一王女殿下に違いない。リリアナ妃にそっくりだ。それにフィリップの面影もある。魔法が使えるのも頷ける。貴女が望めば混乱を治めた後、王位を譲渡するが」
ユイは真っ赤になってかぶりをふった。
「とんでもないことでございます、陛下。私はこの国の事も、貴族の事も何も知らない一介の魔法使いです。それに王妃の子だと確証もないですし」
「そうですか。ならば1つお願いを聞いてほしい。フィリップ王とリリアナ妃、カイザー王太子の亡骸を悪戯されぬようあるところに隠してある。事が成就したあかつきには立派な墓を建てようと思っていたのだ。それをユイ殿に頼みたい。彼らもきっと喜ぶだろう」
「わかりました。ご遺体はどちらに?」
「クイル村の我が屋敷の地下に」
その後、シンとユイはクイル村へと旅立った。