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黄金の道   ~エルとアレクの物語  作者: 長尾 時子
第九章 悲しみの葬送
274/331

274. 密かなる怨念

ケン・サクライ教会ケレス分院ーーー


その地下に奴はいた。瀕死の俺を実験と称して生きながら魔石を埋め込みやがった。仲間達も同じように魔石を埋め込まれ次々と死んでいった。だが俺は生き抜いた。いや、死んで再びこの世に舞い戻って来たと言っていいだろう。生きながら魔石の毒に犯され、気も狂わんばかりの苦しみをこいつに味合わせてやるという一心で正気を保ってきた。だが限界だった。それから俺は長い眠りについた。眠りから覚め、気が付くと、どうしようもない飢えに悩まされていた。奴が俺に与えた生暖かい死体を夢中で貪り貪り食ったのだ。くやし涙を流しながら。それを見ながら奴は言った。「実験は成功だ」と。俺は既に人間では無くなっていた。


あの洞窟には奴の他にもう一人いた。骸骨がマントを着ていたんだが、こいつは本当に化け物だった。闇魔法で俺の中の魔石を赤黒く染めやがった。そしてこれは奴の従属魔法だった。だがそのお陰で俺も闇魔法が使えるようになった。俺は奴の意のままに動かされるのに腹が立ったが体がいうことを聞かない。俺は奴に逆らうことを諦めた。そしてまた月日が経った。


俺は奴の命ずるまま、結界の向こう側にあるシュトラウス王国へ仲間と共に向かうこととなった。奴はどうしてか結界の向こう側へは行けないらしい。代わりに俺に魔石を埋め込み仲間達を実験と称して殺したグレゴリウスが行くこととなった。奴は、『黄金の道』とか言う陸路から入るという。俺はカラード王国から海路で入ることとなった。シュトラウス王国を乗っ取った後、海路の方が魔石を運ぶのに便利らしい。丁度いい。仲間にも故郷を見せてやれる。


そしてリッチと言ったか、あの骸骨が側にいなければ俺は自由だ。グレゴリウスは俺を支配出来ると思っているようだが、生憎と俺を支配できるのはあのリッチだけだ。奴の策に乗ったように見せかけ、あいつにはたっぷり俺達が味わった苦しみを与えてやる。



「これはこれは、サイード王子、お久しぶりです」

ケン・サクライ教会ケレス分院の地下でグレゴリウス司祭は満面の笑みで王子を迎えた。


「貴方がくれば百人力です。こちらはケイダリア伯爵。ここに眠るケイダリア家の唯一の生き残りです。私達はケイダリア一門に力を貸し、この国を乗っ取るつもりです」


司祭の側にいた少年が口を開いた。

「サイード王子殿下。私はロペス・ケイダリア。ケイダリア伯爵を名乗っています。この度はケイダリア一門の恨みを晴らす唯一の機会。お力添え、感謝いたします」

「ほう、君はカラード語が話せるのか?」

「はい、少しだけ。グレゴリウス司祭様に貴方が助力して下さるときき勉強いたしました」


「そうか。頼もしいな。ところでグレゴリウス司祭、準備は出来ているのかな」

「はい。では参りましょう」


ロペスが壁にある細工を押し、地下へ続く階段が現れる。三人はケイダリア一門が眠る地下のカタコンベへ向かい下りていった。





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