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黄金の道   ~エルとアレクの物語  作者: 長尾 時子
第九章 悲しみの葬送
271/330

271. サイード王子のケレス行 ②

注意:生々しい表現があります。

深夜、人気のない墓地で一人の男が墓を掘り返している。サイード王子だ。目当ての墓を見つけ黙々と墓を掘る。遂に出てきた棺桶の蓋を外すと、中には今日納められたばかりの遺体があった。王子はそれを担ぎ上げ、手近な所に置き、再び棺桶の蓋を戻し土をかぶせた。それが終わると彼は遺体を担ぎ上げ森の中へ入っていった。彼は遺体の衣服を脱がし、その遺体に齧り付いた。人気の無い森の中で咀嚼音だけが響いている。彼は夢中で食べていた。こんな新鮮な肉は、ベルトラン以来だ。それにこの遺体の主は相当な魔力持ちだったらしい。体中に魔力が漲ってくる。彼は満足な溜息を吐いた。食事の最後はやはり脳髄だ。彼は頭蓋骨を割り中の物を余さず啜った。


一息ついた後、近くの小川で綺麗に骨を洗った。彼のせめてもの手向けだ。ついでに自分自身も洗う。染みついた血の匂いを消したかった。小川の近くに穴を掘り、丁寧に骨になった遺体を横たえ埋めた。黙祷を捧げる。そして遺体が着ていた衣服を身につけ、先を急いだ。




ドワーフの里についたアレクは早速ラビに会い、聖剣製作を依頼した。今回は時間が無いため7日で出来る範囲の数にした。


「ラビ、また無理を言ってすまない」

「いいえ、アレキサンダー様。死霊が動いているとなると大ごとですからな。出来る限りのことを致します。それにしても厄介ですな。蜘蛛の後はリッチとは。魔王の復活が近いのかも知れません。聖魔法を込めた魔石をご用意いただければ、アレキサンダー様が帰った後でも聖剣を作り続けていますので、ご用があるときはいつでもいらして下さい」

「アレク」

「ああ、ララ、君にも無理を言ってすまないな」

「ううん、魔王が復活するかも知れないんでしょ。私達ドワーフも全力で応援するから」

「ありがとう。そうだ、君達に土産があったんだ」

アレクはそう言いながら空間から、酒樽をいくつか出してきた。近くにいたドワーフが「うほう」と声をあげ、仲間達を呼び集める。

「これは蒸留酒じゃねえか」

「ああ、ウィスキーという蒸留酒だ」

「ヤッホー、今日は宴会じゃ。皆呼んでこい」

どうやら今夜は宴会で皆、酔い潰れるつもりらしい。




充分に補給を果たしたサイード王子はそれから2日間歩き続けた。街道を行き交う人も特にサイード王子に注意を払ってはいない。彼は闇魔法で自分の容姿を変えていた。がしかし、そんな彼に話しかけてくる者がいた。

「もしかして貴方はサイード王子殿下ですか」

サイードは油断なく身構えた。

「誰だ」

「私は闇ギルドの者です。貴方の行方を捜しておりました。ケレスの街へご案内いたします」

「そうか。宜しく頼む」


二人は連れだってケレスの街へと向かって行った。









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