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黄金の道   ~エルとアレクの物語  作者: 長尾 時子
第九章 悲しみの葬送
270/331

270. サイード王子のケレス行 ①

次にサイード王子が目覚めた時は長い時間が過ぎていた。ふと周りを見渡すと、仲間達の体はすでに腐爛が始まっている。


「畜生、寝過ぎたか」

魔力を使い腐敗を止めようとするが、1度腐爛したものは元には戻せない。それにサイード王子自身、魔力の回復は十分ではなかった。

「すまない、皆。これ以上腐敗を止めることは出来そうにない。俺一人でケレスの街へ行ってくる」

そう言い置いて、サイード王子は洞穴を後にした。





アレク達は探索を続けていたが、主立った動きはない。サイロン子爵にはセイガを護衛に付けて政務に支障がでないようにしている。アレクは探索を中断して、聖剣を創りにドワーフの村へ行くことにした。


「エル、悪いが俺は聖剣作りに行ってくる。その間、この街を見張っていてくれるか」

「分かったわ。どのくらいで帰れる?」

「早くて10日ほどだ。何かあったらシリウス様が呼びに来てくれ」

「ふむ。10日か。何もないことを祈ろう」


そしてアレクはドワーフの村へ去っていった。




サイード王子は一人で北上を続けた。勿論、夜間だ。

ある朝、王子は鐘の音で起こされた。近くに村があるらしい。森の中からそっと街道の様子を伺った。どうも葬式があるらしい。棺桶を担いだ人々の列が続いている。王子はその後を追った。どうやら久しぶりに食事にありつけるようだ。人々は何やら話ながら動いている。聞き慣れない言葉だが、どう言う訳か頭の中で変換されしゃべっている意味を理解することが出来る。


死んだのはマシューという若い男だそうだ。何でもマシューの才を妬んだ相手に闇討ちされたようだ。その男も錬金術師を目指していたが魔力が足りず錬金術師になれなかったそうだ。マシューは隣街のケレスの街の錬金術師に修行に行っていたが、妹の結婚式でこの村に戻って来ていたようだ。


それを聞いていた王子は歓喜した。魔力の補充が出来て、飢えも満たすことが出来る。村の共同墓地にマシューが埋葬される様子を物陰から王子はじっと見ていた。



子爵邸の周りには、闇ギルドの者達がずっと監視を続けているが、結界は弱まるどころかビクともしない。それにサイロン子爵を襲おうとしても妙なオオカミが護衛よろしく側を離れない。普通のオオカミではないことはその巨体を見れば分かる。


「どんな化け物があの邸にいるというのだ。普通なら1~2日で結界の綻びは出てきそうなもんだが、もう7日だぞ。それにサイード王子も行方が分からないときている。何か王子から連絡はないか」

グレゴリウス司祭はいらだたしげに言った。相当ストレスが溜まっているのだろう。

「はい。10日前にベルトランで幽霊船騒ぎがあっったと聞きましたので恐らくこちらに向かっているかと思われますが」

「それにしても遅い。何とかならんか」


グレゴリウス司祭の苛立ちはそうそう収りそうもない。



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