27.ペンダントの記憶 ⑱
「一体どうなっている!」怒りの声が王城に響き渡った。
「マール公、そしてカイゼル侯、その方ら討伐軍を出すにあたり余に何というたか今ここで言うてみい」
マール公は冷や汗を流しながら
「はっ、それはそのう、邪魔なサルデスを葬る絶好の機会と・・」
イヴァンはカイゼル侯に目を向け、「それだけか」
「あ、あのサルデスは兵を集めてもせいぜい1万にも満たないのだから倍以上の兵数の我々が負けるわけがないと」
「それがなぜ王都の外に奴が来ている。しかも『降伏せよ』だと?」
「王都の城壁は堅牢です。それに王都にはまだ1万の兵が常駐しています。王都民を人質に籠城すれば奴は手が出せないでしょう」
「返事はなしか。城壁の内側に籠もってしまえば手は出せないと踏んだか。愚かな」
男爵は王都の地図を広げ軍議をおこなった。
「夜討ちを決行する。まず、シン殿とユイ殿が西門を突破、その後正面の大門を開けてもらう。大門を抜けたら一気に王宮まで駆け抜けるぞ。そして一気に王宮を制圧する。反対の者はいるか」
「異議なし」「それでは準備を始めろ」
夜、各城門ではかがり火を焚き多くの兵が警戒していた。普通ではこれを突破するのは中々困難であったろう。しかし
「さあ、お前達、遊んでおいで」とシンは夥しい数のコウモリを放ったのだ。
『キーキーキー』コウモリ達は城門を越え人型になった。ヴァンパイアの身体能力は人間を遙かに凌駕する。たちまち西門は制圧された。
「正面の大門へ行くか」
大門も程なく制圧し、開門する。と同時に1万の軍勢がなだれ込み一気に王宮へと向かった。
イヴァン王とマール公、カイゼル侯は深夜にも関わらず軍議をしていた。
「何事だ」
「陛下、夜襲です。敵が城門を突破し・・」
「イヴァン王!前王をクーデターで倒し民に圧政を強いた罪、あがなってもらいますぞ。おい、王を捕えよ。裁きの日まで死なすな」「はっ」
この日、イヴァン王は北の塔に幽閉され同じく捕まったマール公、カイゼル侯は貴族牢に入れられた。
夜が明けるまでには王宮を始め、マール侯爵家、カイゼル侯爵家、それに加担した貴族家らも制圧された。
そして彼らに裁きの日がやってくる。
ペンダントの記憶もあと1話です。