261. 死者の土地 ②
「死者の土地?」
「ええ、そうです。ご覧なさい。草木でも生命力を失い枯れています。ここはそういう土地なんです」
「他の者は皆死者になったということか。ではお前だけ何故生きている」
「それは・・・」
司教ザイールはそう言うと、懐から黒い魔石を取りだした。
「これはね、生命力を奪う魔石です。私はこれに選ばれた。これによって永遠の命が約束されている。皆さんの生命力はすばらしい。私に下さい。大事に使わせてもらいますよ」と魔石を頭上に掲げた。そして何やら呪文を唱えている。すると黒い魔石が輝き出し中から黒い煙が出てきた。
「ロン、結界で覆え」
ロンがすかさず結界で司教ごと覆った。
「な、なにを」ザイールの体に黒い煙が纏わり付く。すると司教の体はみるみる黒い魔石に吸い込まれていく。カランと黒い魔石が落ち、そこには司教の残骸があった。
「自分で自分を吸い込んだか。それにしてもこの魔石・・・。ロン、この魔石を結界で覆ったままにできるか」
「うん、できるよ」
「この石の発動条件が分からないな。あの司祭は選ばれたと言っていたが」
「シリウス様なら分かるかもしれない」
「じゃあエルはロンを連れて獣王国のシリウス様のところへ行って、この魔石の解析をしてくれ」
「うん、分かった。解析したらどこで落ち合う?」
「俺はケイダリア家の遺体を確認するため暫くここに滞在する。そうだなケレスの街へ戻ろう。宿を決めてそこで落ち合おう」
アレク一行は教会を後にし、ケレスの市中に戻った。冒険者ギルドで宿を紹介して貰おうと、冒険者ギルドを捜していると、馬に乗った立派な一団がこちらに向かってやってくる。アレク達はクロック達を端に寄せその一団をやり過ごそうとしたその時、相手と目があった。その相手はハッとした後、いきなり馬から降り跪いた。
「アレキサンダー第二王子殿下とお見受け致します。私はケレスの街を王家より管理を任されているサイロン子爵と申す者。王家より殿下がケレスの街を視察なさる旨、知らせが届いております。まずは・・」
「サイロン子爵、立ってくれ。ここは人通りも多いし、かなり注目も集めている。どこか話せる場所に移動しよう」
「申し訳ありません。それでは我が邸に参りましょう。お迎えする準備もしていることですし」
「では、案内を頼むとしよう」
一行はサイロン子爵に案内されて、子爵邸へ着いた。ここはケイダリア公の別邸だった建物で、街の中心部からほど近い貴族街の中にあった。玄関には家令を始め使用人達が一列に並び挨拶をする。
「さあ殿下、お入りください」
広々とした玄関ホールを抜け談話室へと案内された。
「サイロン子爵、先触れもなく突然訪れてしまって申し訳ない」
「いいえ、王都より殿下がこちらへいらっしゃる旨の連絡は頂いております。こちらこそ対応が遅れまして申し訳ありません」
「ところでサイロン子爵、俺がなぜここへ来たか、理由は王都から知らせてきたか」
「はい、おおよそですが聞いております」
「そうか。先程、我々はケン・サクライ教会ケレス支部へ行ってきた」
「なんと・・」
「そこで不可解な物を見た。そこでそれの解明のため、暫くケレスの街に留まりたい。どこか宿を捜してくれないか」
「何をおっしゃいます、殿下。ここをお使いください。私は独身ゆえこの邸は大きすぎるくらいです。皆様に使っていただけるならこの邸も使用人も喜びましょう」
「そうか、かたじけない。暫く、世話になる」アレクは軽く頭を下げた。
「あとサイロン子爵、これからのことについていろいろと用件を詰めたい」