251. アーサー王との再会
「レイ、レイモンドか。久しぶりだなあ」
「西門から連絡が入ってすっ飛んできたんですよ。殿下もお変わりなく。クロックも元気そうだな」
クロックは覚えているのか首を上下に振っている。
「ところでお前、仕事はいいのか。ケルティウスの近衛だろう」
「やだなあ。今は近衛大隊の副団長です」
「出世したなあ。ああ、紹介する。こちらがエル、そしてセイガとロンだ」
「初めまして。殿下の学友だったレイモンド・シュゼインです」
エルはフードを取り挨拶をした。
「ご丁寧にありがとうございます。私はエル・アレン。殿下と旅をご一緒しております」と微笑んだ。
レイモンドはエルの姿を見て驚いている。この国では珍しい黒髪に赤い瞳。白く透き通るような肌。もの凄く美人だ。
「で、殿下。こんな美人と旅を・・。うらやま・・。いやその・・」
レイモンドがエルをみてあたふたしているのをおかしそうに見ていたセイガが「僕はセイガ。そしてロン。僕らは人間ではない」セイガがいきなり変身した。輝く銀色の毛を纏ったオオカミが現れる。「神狼だ」それを見ていたロンは「僕も変身したいけど驚かしちゃうからね。僕は竜人国王子、ロン・ドラギアナ。宜しくね」
「はあ、殿下。すごい方々とご一緒に旅をされていたのですね。ではご案内いたします」
再び騎乗し、王城の中に入る。エルはフードを外したまま騎乗し物珍しげに王城の中を見ている。王城の中は広い。とそこへまた馬が何騎か走ってくる。アレン達一行の前で止まった。
「兄上!」
「ケルティウス、大きくなったな」
「はい。兄上、そちらの方は・・」
「ああ、旅を共にしているエル殿だ。正式な紹介は後ほどな」
「エルと申します」と頭を下げ微笑んだ。
ケルティウスは真っ赤になりながら、「馬上で失礼します。ケルティウスです。後ほど正式なご挨拶をいたしますので」
「兄上、陛下が首を長くしてお待ちです。急ぎましょう」
王宮には入り、王の執務室へと向かう。執務室の隣に控え室があった。王はそこでアレク達を迎えた。
「父上、先触れもなく訪問したことをお許しください」と言ってアレクは頭を下げた。
「何を言っている。我が子に会うのに先触れなど必要ないだろう。それよりも元気そうだな。それがなによりだ。ところでお前の友人達を紹介してくれるか」
「はい。こちらがエル。アレン商会の一人娘ですが、実は結界の向こう側、旧ユークリッド王国の聖女なのです。旧ユークリッド王国についてはヴィルヘルムからお聞きおよびだと思いますが」
「そうか。彼女が旧ユークリッド王国の聖女か。アーサー・ケン・シュトラウスだ。このアレキサンダーの父でもある。よしなに頼む」
エルは跪いて答えた。「王国の太陽であらせられるアーサー・ケン・シュトラウス陛下。私はエル・アレン、旧ユークリッド王国の聖女と言われている者。アレキサンダー殿下には旅を通じて助けていただいております」
「まあ、そう固くなるな。子細は息子から聞いている。よくぞ参られた」
「ありがとうございます」
「ところでアレク、こんな美人と旅とは羨ましいぞ」
「父上!」
アハハとアーサー王は笑い視線を移した。セイガは人間型から変身し、神狼の姿となる。
「僕はセイガ。神狼だ。彼とは契約している関係で常に側に居る」
「なるほど。神狼と契約を結んでいるのか。我が息子ながら恐ろしいな」
そして最後にロンが紹介される。「僕は竜人国第二王子、ロン・ドラギアナ。エルに助けられ彼女と契約を結んでいる。実はセイガのように変身できるけどお城を壊しちゃうからこのままで」
「ロン殿か。城を壊されたら敵わんな。よしなに。ああお前も挨拶しなさい」
「私はケルティウス・ケン・シュトラウス。この国の第三王子です。日頃より兄がお世話になっています」
ケルティウスが挨拶したところで王が人払いを命じた。