249. シリウスの帰還
彼らが館について3年の月日が流れた。エルは外見は変らないけれど、精神的には大人の女性として成長していった。そんなエルをアレクは戸惑いながらも見守っている。
ある日シリウスが獣人国へ帰ると言い出した。
「エル、アレク、もうお前達に教えることはない。後はお前達自身で精進して欲しい」
「シリウス様、まだまだ貴方の教えが必要だと思っています」
「そう言ってくれるのはありがたいが、僕にも獣人国を見守ると言う役目があるからね。でも、そうだな、ここの暮らしは悪くないから、ちょくちょく遊びにはくるかな」
「とか言って、シリウス、都合をつけては戻ってくる気だろう」とセイガはジト目でシリウスを見た。
「コフッ、まあそれは置いといて魔王のその後も気になるしね。獣人国を回って見るつもりだ」
「そうですね。あれから随分経ちますが、動きがないのは気になりますね」
「まあ、奴らは時間なんてあってないようなもんだからな。3年なんて休みのうちに入らんだろう。でもそろそろ動き出しそうな気がする」
「それは直感ですか」
「まあそんなもんだ。ところでお前達はどうする?」
「せっかく転移魔法が使えるようになったので、一度シュトラウス王国に帰ってみようかと考えておりました。それに、ウィルやヴィルヘルムのことも気になりますし」
「そうか。そういえばウィルは君と同郷だったな。詳しい話が聞けたら、僕にも聞かせてくれ」
「分かりました」
「では、行くかな」シリウスは杖を挙げた。魔方陣が現れる。魔方陣が回り出し、そして消えた。
「行ってしまったね」
アレクはエルを見た。エルは微笑みながらアレクを見て「寂しい?」と聞いた。
「うん、ちょっとね。俺達もシュトラウスへ帰る準備をするか」
「その前に、お腹空いたよ」とセイガが吠えた。
「ごめんごめん、朝めしぬいちゃったね」
「もう、昼過ぎだよ。ロンも空いたよな」
「うん。僕達が伸び盛りだって忘れたの」
「じゃあ、戻ろうか」
皆は館に向かって歩き始めた。早春の風がさあっと吹いていき桜の花びらを舞いあげていく。アレクは足を止めてエルを見る。そしておもむろにエルの髪に手を伸ばした。
「花びらがついている」と言ってそれを摘まんだ。
「えっ」と言ってエルはアレクを見上げて顔を真っ赤にした。
アレクは目を逸らして「昼飯は何を食おうか」とセイガにいうと「僕、唐揚げがいい」といいロンも「僕も」といって2人とも館に向かって走って行った。
そんな2人を執事のマルコムが笑顔で向かい入れた。その後ろをアレクとエルがゆっくりと歩いていた。
アレクとエルがちょっといい感じになってきました。