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黄金の道   ~エルとアレクの物語  作者: 長尾 時子
第七章 彼らの残した物
242/330

242. シリウスの過去

「ただ、私のいた前世の世界は魔法がなかった世界でした」

「魔法がない。でもこの炬燵にしろ、照明にしろ、魔法ではないのか」

「これは『電気』というものを応用して使っているのです。実を言いますと、魔法以外はこの世界より発展した世界だと思います」

「シリウス、これはすごい事だよ。僕はアレクと契約して良かったと思っている。だって、居ながらにして異世界を体験できるのだからね」

「アレク、お父様と同郷だったの?」

「ああ、お会いした事はなかったけど親戚だった。とそういえば・・」

「何?」

「ウィルってあいつも同郷だった。しかもほぼ同時代の人間だ。詳しくは聞いてないが、今度あったら聞いてみよう」


「と俺はこんなところか。次はシリウス様。貴方はハーフリングの生き残りとして魔王に会ったことがあるのではないですか」


「実はない。いや、ちらっとだけ見たのかな。何しろ10に満たない子供だったからね。ただ僕は大災厄の半年前から悪夢を見ていたんだよ。何万という虫が襲ってくる夢。両親にも村の人達にも話したんだけど、子供の話すことだろ。誰も信じてくれなかった。僕は一人で地下室を掘った。皆にバカにされながらね。僕一人入れるくらいの穴を掘って水と食料をそこに運んだんだ。村祭りの時に、空に真っ黒な何かが飛んできた。僕は急いで地下室に逃げ込んだんだ。すごい音がして僕の意識は飛んだんだ。気が付くと辺りはシンと静まりかえっていた。地下から這い出て周囲を見渡すと何もなかった。あるのは家の残骸と村人達の白骨死体だけだったよ。それで村人の遺体を集めて葬っていたら、神狼(フェンリル)に会ったのさ。セイガの前の神狼(フェンリル)だけど」


「そうだったんですね」

「その時は、それが魔王の仕業で僕の種族が死に絶えたなんて知らなかった」

「うん。僕も前の神狼(フェンリル)の記憶を共有しているからその時のことは覚えているよ。たった一人で村人の弔いをしている少年。彼も見つけた時は驚いていたよ。そして直感した。この子には何か大いなる力が作用してるって。で、ずっと一緒にいたんだけど寿命が来て僕に代替わりした」


「私達がここで集まって修行しているのも、何かに導かれたのかもしれませんね」

エルがホウっと息を吐いて、そう呟いた。


「だから魔王がどのような者なのか、結局はわからずじまいだ。でもこの間、魔王の右腕と呼ばれたタランチュラと戦って魔王の片鱗を見た気がした」

「そうですね。我々はもっと研鑽を積まなければならないな。さて、エル、君はどうだ?」


皆の目がエルに集まった。








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