239. ある日の炬燵
それからのエルは人が変ったように魔力コントロールに打ち込み、見事魔力を自在に操れるようになっていった。外は相変わらずぐずついた天気が続いていたが、時折白い物が混じるようになってきた。冬の訪れである。
ある日の夕飯の時、ロンが人間型になり椅子の上に立ち上がって話始めた。
「皆聞いて。僕ね、もう魔力を貰わなくて良くなったんだよ。これからは普通に生活出来るようになったんだ。魔力コントロールが出来るようになって、魔力がダダ漏れすることがなくなたんだ。だからこれから皆と同じようにご飯も食べれる。だからこれからこの形で過ごすからよろしくね」
「そうか良かったな、ロン。あとは王子として勉強もしっかりしなきゃな」
「ええー」
「しっかり僕がみるからね」とシリウス。
温かい夕飯が運ばれてきた。勿論、ロンの分も。和やかな雰囲気の中、執事のマルコムが話始める。
「皆様、冬に向けて娯楽室に『炬燵』と言う物を設置いたしました。寒い時は、ぜひお試しください」
「炬燵?」
「はい。足を温める道具だそうで。一度入ったら心地よさで抜けられないとか」
「本当?うわあ、楽しみだなあ」
「食べたら、早速行ってみよう」
皆はそそくさと夕飯を食べると娯楽室に向かった。
「あれが『炬燵』?」
「思っていたのと違う」
「まあいいから入ってみろ。あー、マルコム、ロンとエルに温かいミルク、シリウスと俺にはホットワインね」
「アレク、僕にはないの?」
「お前はもぐっていろ」とセイガを炬燵の中に引き入れる」
「足だけでしょ。本当に温まるの?」
「まあ見てなって」
「お待たせしました。ミルクとホットワインです」
「ありがとう」
「いいね。ホットワイン。体が温まる」
「そうでしょう、シリウス様。どうだロン、エル」
「うん、温まってきた。これいいかも」
「ところでセイガはどうだ」
「すぴー・・・」
「こいつ寝てるぞ」
「なんだか気持ちいいね。僕も眠たくなっちゃった」
「これは何の魔法だ。僕も気持ちよくて眠くなった」
「でしょ?そしてここから出たくなくなる」
「こんな暖房器具があったなんて」
「ここで鍋料理なんか最高だぞ」
「えっ、鍋料理?それ美味しいの?」
「うわっ、中から突然顔出すな。今度、作ってやる」
「ところでアレク、ここからどうやって出るの?魔力コントロールより難しいんだけど」
「シリウス様、どうしたら・・・」
「ぐーーー」
ほのぼのした回でした。