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黄金の道   ~エルとアレクの物語  作者: 長尾 時子
第七章 彼らの残した物
238/331

238. スランプ

雨期というだけあって、すっきりしない天気が続いている。気温も徐々にだが低くなってきていた。


エルとアレクはあれからずっと魔法の修練に明け暮れていた。エルはまず魔法の基礎が出来ていないため、シリウスが常時指導し、魔法書の山と格闘している。アレクはCD-ROMに入っていた資料を見ながら空間魔法と転移魔法の完成を目指していた。


「エル、君は魔術のコントロールが全然出来ていない。まず、それを完璧にすることだ。あと、魔法は想像力だ。雨が止んだら出来るだけ外に出ていろんな物に触れるんだ。いいね。実践はそれからだ」


エルはしゅんとしながらも「はい」と小さく呟いた。それからは魔力をコントロールすることに重点を置き修練に励んだ。しかしながらエルの膨大な魔力をコントロールすることは容易ではなかった。魔力をコントロールすることばかりに気を取られ、魔法が顕現しないことが多かった。


そんなある日のこと。久しぶりにアレクに誘われ外に出た。この季節には珍しく空が晴れ渡っている。秋ということもあり、大気は澄み切っていた。


「ああ、やっぱり晴れの日はいいな。心が落ち着く。今まで屋内にいたからか気分が鬱屈していたんだと思う」

「そうですね。久しぶりの青空を見て、心の憂さが晴れるようです」

「セイガから聞いたけど、エルは何か迷っていることはない?」

「えっ、それはどういう・・・」

「魔力コントロールがうまくいってないんだって?」

「やればやるほどうまくいかなくて・・」

「なんていうのかな。無理矢理自分の気持ちを抑えて魔法を使うのじゃ無く、エルのしたいようにすればいいんじゃないかな。心のままに。っていうか自分でこうしようと思ったことを魔法に乗せる。大きくしたいと思ったら大きく、小さくしたいと思ったら小さく。無理にするんじゃなく、その時感じたままを魔法に乗せてみると意外にすんなりいくもんだ。魔法ってそう言うもんだと俺は思う。難しく考える事はないんじゃないかな」

「心のままに・・」

「考えてもご覧、魔法は想像力だとよく言われているだろう?心の在り方が一番影響するんだ」

「そっか・・・。私、難しく考えすぎていたかもしれない」

「今日はクロムと乗馬を楽しまないか。そう言えば、ロンもセイガも寂しがっていたし」

「そうですね。まだ、この辺、見ていないところ一杯在るし」



アレクとエルは厩舎に来た。早速、クロックがアレクをみてそわそわしている。アレクとエルはそれぞれの馬に鞍を置き、牧場に出た。するとエルがいきなり駆けだした。クイックも慌てて後を追ってくる。

つられてアレクも走り出した。セイガも追ってくる。ロンは嬉しそうに空を飛び、エルの近くを飛びながら「キュイ」と鳴いた。


そうか。私は自由だ。心のままに。風を切りながらエルは思った。



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