237. 母の想い
~~~エルの場合~~~
エルが昼食を済ませ部屋に戻ると、机の上に大きな水晶の玉が乗っていた。何だろうと近づいてみると紙にペンダントを水晶に近づけてみてと書いてある。ペンダントを取りだし水晶に近づけてみた。すると水晶の表面に金髪の綺麗な女性が浮き上がってきた。
「お帰りなさい、私の可愛い子。貴女がここへ来たってことは無事覚醒したのね。私達が貴女の側に居てあげられれば良かったのかもしれないけれどそれが出来ないのがとても心残りだったの。だからここを創った。好きに使っていいわ。それからこの水晶にはユークリッド王国のあらゆる場所が映し出せる様にしてあるから気になった事があったらこれを覗いてご覧なさい。きっと役に立つと思うから。貴女のお父様も貴女のことをとても心配しているの。ここでしっかり魔法の勉強をして『真祖』としてこの世界に貢献して欲しい。遠くから貴女のことをいつも思っている」
ここで映像が途切れた。
「お母様・・・」エルは呆然と水晶を見つめていた。
ノックの音がして、執事のマルコムが入って来た。
「エル様、雨が止んだようです。馬たちを厩舎に移したいのですが」
「分かったわ。アレクにも声を掛けてみる」
アレク達がトンネルに入って行くと、クロックがブルルルと鼻をならした。置いて行かれたかと不安だったのだろう。馬たちを引き出すとマルコムが馬に乗って先導してくれた。牧場のへりを進んで行くと厩舎らしき建物が見えた。
「ここが厩舎です。あと、羊、牛、豚、鶏などの舎がこの辺りに点在しています。世話は基本、ゴーレムが担当しています」
周りには何体ものゴーレムがせわしなく動いている。
アレクは何体ものゴーレムを一体誰が動かしているのか気になった。
「すみません、あのゴーレムは誰が動かしているのですか?」
「それは館の地下に巨大な魔石があり、シン・サクライ様がプログラミングを行い魔力を注入して動かしております。むこう100年くらいは大丈夫でしょう」
アレクは内心驚きながらもマルコムの後についていった。するとそこには低い木々が植えてある場所に出た。
「こちらは一応果樹園になっております。果樹園の先には畑がありそこでもゴーレムが働いているんですよ。雨期に入りましたので、冬支度で忙しくしております」
果樹園から館に戻る際には、美しい庭園があった。東屋もある。
「すごいですね。ここはまるで別世界だ」
「ここは全てエル様のために創られた場所でございます。どうぞ心おきなくお過ごしください」
エルは自分のために創られたという館全体を改めて見直した。
申し訳ありません。タイトル変更いたします。