228. 別れ ①
「これはある場所の鍵だ。僕はシン・サクライに会った時、もし君が目覚めたらこれを渡してくれと頼まれたんだ」
「これをお父様が・・」
「そう。だから君達にはこの鍵の場所へ行って貰いたい」
「それは遠いのですか」
「いや、それほど遠くないと思う。実は僕も場所は分からないんだ」
「えっ、ではどうやって行くのですか」
「彼が言うには、エルにこの鍵を渡せば分かると言っていたが」
シリウスがエルに鍵を渡したしたところ不思議な事が起こった。エルのペンダントが輝き出したのだ。そして鍵がエルの手を離れ、空中である方向を指し示す。
「エル、この鍵の方向に行けばその場所に着くんじゃないか」
「僕もそう思う」
「そうね、この方角に向かえばいいってことね」とエルは空中に浮いている鍵を握りしめた。
「じゃあ、早速、旅の準備を始めようか」
そこへ「おおーい」と言いながらセイガが走って来た。
「ジル達の所に行っていたんだけど、明日にはレグルスへ戻ろうかって話してる所だった」
「大変、ジル姉さんの所へいかなきゃ」
「安心して。僕が帰ってきたのを知らせると出発を延ばしてくれた」
「おい、セイガ。ジル達の所まで乗せてくれ」
「いいよ。シリウスはどうする?」
「僕はエルフ二人と話がある」
「じゃあ、アレク、エル乗って。ロンはジル達の所へいるから」
セイガはオオカミに変身するとアレク達を乗せて走り出した。坂を下り街中へ出ると人間型に変身する。見覚えのある宿屋の前には、ジル達4人が待っていた。
「ジル姉さん」エルがジルの胸に飛び込む。
「エルちゃん、お帰り。アレクさん、お疲れ様。昼食まだだろう?サンガが注文しておいたから中へ入ろう」
「やあ、アレクさん。大変だったね。その後どうなったか話が聞きたいな」とサンギが言うと
「とにかく中へ入ろうよ。僕、お腹空いたよ」とセイガがせかした。
宿屋に入り、昼食を取りながらアレクは結界の向こう側で起きたことをジル達に話した。ジル達はタランチュラと聞いて驚いていたが無事討伐出来た事を知ると安堵の息をついた。
「ところで私達は出発を明後日にしたんだけど」
「悪い、ジル。俺達はレグルスには戻らない。行くところが出来た」
「そう、残念だけど仕方ないか」
「そうだ、ジル。旅の準備、手伝ってくれないか」
「任せてよ。それで何が欲しいんだい?」
「ああ、それなんだが・・・」
アレク達はジルに必要な物を頼むと宿を後にした。その後、街中を進み中央広場へ出る。大きなテントは畳まれていてそこはガランとした空き地になっている。そこにはシリウスとフランソワーヌとフリージアがいた。
「アレク様、私達は里へ帰ります。今まで本当にありがとうございました」
「こちらこそ。お世話になりました」
「ぜひ一度、私達の里へも来て下さい」
「機会がありましたらぜひ訪れさせていただきます」
「賢者様、それでは」
二人は手をつなぎ歩いて行く。その後ろ姿がすうっと消えた。妖精の道を使ったのだろう。空き地にはアレク達と賢者だけが残された。