227. 帰還 ②
ベアトリス女王は侍従と共に控えの間へ急いだ。そこには賢者シリウス始めその一行が無傷で帰って来ていた。
「賢者様、ようご無事で戻られました」
「心配掛けたね、ベアトリス。タランチュラを倒してきたよ。これであっち方面は当分無事だ。聖ピウス皇国は何か動きはあったか」
「特に動きはないようです。ところで賢者様、ヴィルヘルムとウィルの姿が見えないのですが」
「ああ、ここにいたヴィルヘルムとウィルはアレクの国、シュトラウス国に預けてきた」
「そうでしたか。あちらは人間の国。それに結界もありますれば安全でしょう」
「ベアトリス女王陛下、彼らを滞在させて頂きありがとうございました。故ユークリッド王国の関係者として御礼申し上げます」
「いやエル殿、貴女にはこちらも世話になっておる。当然のことをしたまでじゃ」
侍従が頭を下げて控えの間にやって来た。
「皆様、お部屋の用意が出来ましたので、お部屋でおくつろぎ下さい」
「僕はベアトリスと話があるから、アレク達は部屋で寛いできて。あと、エルフの二人も」
一旦は部屋に入ったアレク達だったがエルがクロック達の様子を見たいと言い出し厩舎に行くことになった。厩舎ではアレク達の訪れを察知したのかクロックの嘶く声が聞こえる。
「やあ、クロック元気だったかい」
興奮するクロックを静めるようにアレクは彼の首を撫でてやると嬉しいのかクロックは首を上下に振っている。エルがクロムの側に近づくと、ひょっこりと子馬が母親の影から首を出した。
「うわあ、見ない間に随分大きくなったね」とエルが手を差し出すとしきりに匂いを嗅いでいる。
「ねえ、アレク。この子の名前、何にしようか」
「そうだな、素早く動くということでクイックはどう?」
「クイックかあ、いいんじゃない。あなたは今日からクイックよ」
子馬は名を貰ったのが分かったのか、大きく飛び跳ねた。
「大分大きくなっているから、旅に連れ出しても問題なさそうだな」
急に後ろから声がして振り向くと、そこにはシリウスが立っていた。
「ああ、ビックリした」
「ごめん、ごめん。君達にはこれからある所に行って貰いたいんだ」
「ある所?」
「そうだよ、エル。僕は君に渡したい物があると言ったね。これだよ」
そう言って、シリウスはエルに鍵を見せた。