226. 帰還 ①
「明日帰る。それまでゆっくり休みなさい」
賢者シリウスは言い置いてその場を去った。エルとアレクは目を見交わし、「賢様様が言った渡したい物ってなんだろう」と首を捻っていた。そんなところへ腹一杯ご馳走を食べまくってご機嫌なセイガが戻って来た。
「セイガ、賢者様が渡したい物があるって言うんだけど何か知らない?」
「えー僕に聞かれても。戻ったら渡してくれるんでしょ。それでいいじゃない」と話にならない。まあそれもそうかとエルは宴を楽しんだ。
翌朝、賢者シリウスは長老に対して指示を出した。
「長老、タランチュラ本体を壊滅したからと言っても油断ならない。あと、2週間で秋分点が訪れる。そう、結界が一時的に開かれ『黄金の道』が現れる。アインステッドと『黄金の道』を繋ぐ橋を破壊したが闇ギルドの者や怪しい者がこちら側の魔の森に来る可能性が高い。君達には『黄金の道』の監視をお願いしたい」
「そうすると、『黄金の道』を通って魔王関係の者がこちら側に来ると言うことですか」
「魔王関係だとは断言できないが、闇ギルドの者はよくない噂を聞く。君達も良くない物を持ち込まれるのはいやだろう」
するとそれを聞いていたサイラス・ナーガと学院長が、「我々の国王にも魔の森の監視を強めるよう進言いたします」と言って、シリウスと長老を見た。
「そうして貰えるとありがたい。これからは春分点・秋分点問わず強化して欲しい。特に、橋の修復までは時間が掛かりそうだしな」
「すぐに手配を致しましょう」と言って、サイラスは精霊を呼び出し国王への書簡を送った。
賢者シリウスが杖を挙げた。魔方陣が回りだす。
「サイラス先生、学院長、短い間でしたがお世話になりました」
「何を言う、アレク、お礼を言うのは私達の方だ。元気でな」
「サイラス、私達は里へ戻るが、何か伝えることはないか」
「まあ、元気にしているとだけ伝えてくれ」
「分かった」
「セイガ様、この度はありがとうございました」
「うん、長老も村長も元気でね」
魔方陣が光り、そして彼らはいなくなった。
「では、私達は早速王都へ戻り、陛下に事の次第を報告しなければ」
「われわれも秋分点に向け、準備を始めます」
それぞれが自分の仕事に戻っていくのであった。
女王がいつものように執務を行っていると、侍従が慌てて執務室に入って来た。
「ベアトリス女王陛下、賢者様ご一行が戻られました」