223. ヴィルヘルムの決断
あああ 苦しい、熱い、熱い
折角、長い年月をかけ力を蓄えてきたのに
あんなちっぽけな人間ふぜいに私が負けるなんて
魔王様、ごめんなさい、魔石 もって いけない・・・・
結界の中の炎は3日3晩燃え続け、4日目の朝、ようやく鎮火した。ロンが結界を外すとそこには魔石が無数転がっていた。アレクが魔石を集め、聖魔法をかけるとあっけなく消失する。
「終わったか」
「ああ、問題は無い」
街に人が戻って来ている。多少建物の損害はあったものの被害は驚くほど少なかった。壊れた橋の建設も急ピッチで進められている。
「ところで、ヴィルヘルム、お前はこれからどうしたい?」
アレクは街の復興を、興味深そうに眺めているヴィルヘルムに問いかけた。ヴィルヘルムは首を傾げアレクの問いかけに不思議そうに答えた。
「どうって。また獣王国に戻るのではないのですか」
アレクはウィルを見、そして続けた。
「獣王国は、聖ピウス皇国の隣に位置する。お前にとってかなり危険な場所だ。もしお前が望むなら、このシュトラウス王国でお前のことを保護することも出来るが。ここはお前と同じ人間の国だ。ここで学んで後の王国復興に役立ててみてはどうか」
「えっ、本当に?この国に滞在しても良いのですか?」
「お前が望むなら、俺が国王に頼んでみるが」
「ぜひお願いします。ここは発展した国で僕はここで学びたい」
「よし、分かった。俺から陛下に頼んでみよう」
そこでアレクはブロウを呼び出し、国王に書簡を託した。程なくして国王からの返事が来て、晴れてヴィルヘルムは国賓として王宮に留まることを許可された。
「アレク様、なんとお礼を申し上げてよいか。ありがとうございます。これでヴィルヘルム様も心おきなく勉学に励まれるでしょう」
「いや、大した事じゃない。王宮に行ったら俺の弟、ケルティウスと仲良くしてやってくれ」
「アレクさんの弟さんですか。会うのが楽しみだなあ」
「取敢えず、子爵が王都まで同行するそうだ。子爵の用意が出来るまではエルの家へ厄介になるといい」
「家にはマリーという家政婦がいるからなんでも相談して」
「分かりました」
「聖女様も何から何まで本当にお世話になります」
彼らがエルの家へ向かった後、シリウスがアレクにズデーデン王国のオオカミ族の村へ帰る旨を告げる。オオカミ族の戦士達はアレクの治癒魔法ですでに全快していた。
「キール子爵、それではヴィルヘルム達のことは宜しく頼む」
「はい、殿下。この度はこの街のためにご尽力を頂きまして本当にありがとうございます。陛下にもこのことはご報告させて頂きます。引き続き『黄金の道』の探索に出られるのですね。殿下の無事を祈っております」
シリウスが杖を挙げた。オオカミ族の戦士とアレク達の周りに魔方陣が描かれる。そして魔方陣が回り出し・・・
そこにはアインステッドの街の復興の音が鳴り響いていた。
これで7章終了です。今まで、お読み頂き、ありがとうございました。次はまた獣王国に戻ります。
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