221. タランチュラとの戦い
ドガーン ゴゴーン
更に雷撃は2発、3発と続いた。
今まさに橋を渡ろうとしていた大蜘蛛達が飛び散り、川にばらばらと落ちていく。川の表面では大蜘蛛を餌にしようと待ち構えているビッグマウスが集まってきている。タランチュラはこの様子をみて怒り狂っているようだった。「シャー」という威嚇音とともに立ち上がり大蜘蛛達を吸収しだした。夥しい数の大蜘蛛がタランチュラに吸い込まれていき、タランチュラの本体がみるみる大きくなっていく。
「ひいいいい」近くにいた斥候の兵士が声を上げる。
「早く逃げろ」と腕を掴んで後ろにやると、転びそうになりながらも駆けていった。
「あれが奴の本体か。聞きしに勝る凄さだな」
川の表面ではこれまた体長7~8mもあるビッグマウス達が我先に大蜘蛛を捕えようと水面で争っている。
「橋は壊したが、奴は川を渡る気だ」
体長50mほどの体になったタランチュラはこちら側に向けて糸を放って来た。固まりになった糸は着弾し、さらに糸が放たれる。さらに、さらに
そうこうする内に、蜘蛛の糸で橋ができあがった。するとタランチュラは又も体を分解し、大量の大蜘蛛となってその橋を渡ってきた。
「来るぞ」
その頃には、魔剣を携えたオオカミ族の戦士とエル達が川岸に集まって来ている。
「各個撃破だ。いくぞ」
それぞれが渡り終えようとする大蜘蛛達を迎え撃つ。エルは巨大なファイアーボールで大蜘蛛達を弾き飛ばす。空からはロンがブレスを吐いている。それでも夥しい数の大蜘蛛が渡るのを抑えきれない。こちら側に着いた大蜘蛛は合体し始めた。
「出来るだけ数を減らせ」
アレクは押し寄せてくる大蜘蛛を火魔法で蹴散らしながら叫んだ。おのおのが死力を振り絞って大蜘蛛を消し去っていった。最後の大蜘蛛が川を渡りきったのを始末したとき、背後で「シャー」という威嚇音が聞こえた。振り返るとそこには体長20mの大蜘蛛タランチュラが合体を終え、アレク達に向かってきている。そこへ雷撃がタランチュラを襲った。
「アレク、今のうちにこちらに逃げろ」シリウスが叫んだ。
アレクはオオカミ獣人やエルと共にシリウスのところまで走って逃げる。タランチュラは雷撃によってダメージを受けて、一瞬たたらを踏んでいたがまたもやアレク達を追ってくるが建物が邪魔をしてうまく追えないでいる。そのすきにシリウスの所についた。
「シリウス様、雷撃はあとどれくらい使えますか」
「持って2,3発というところか」
「奴の急所は」
「胴体と頭との境目に魔石があるはずだ」
「ロン、エル、援護を頼む。あとセイガお前あの蜘蛛の上に飛び上がれるか」
「えー、ぞっとしないね。分かったよ」
「私が奴の急所に聖剣を突き刺しますので、そこに雷撃を頼みます」
アレクはそう言うと、変身して巨大なオオカミになったセイガに乗りタランチュラへ目掛け走っていった。