212. 再会 ⑦
一行は集落が見えなくなるとまたセイガに乗り街道を目指した。ロンが不可視の結界を張っている。
「あ、あれ街道じゃない?」
「そうだな。あれを右に曲がればもうすぐだ」
そのままセイガは走り続け、夕方にはアインステッド郊外の住宅地に着いていた。真っ先に見えたのは子爵邸である。アレク達はセイガの背から降り、ロンが結界を解いた。
「エル、先に帰っていてくれるか。俺はシリウス様と子爵に会ってからそちらに向かう」
「わかった。じゃあ、セイガ、ロン、行こう」
子爵邸に着いたアレクとシリウスは門番に取り次ぎを頼んだ。
「すまない、子爵に取り次ぎを頼む。アレキサンダーが来たと伝えてくれ」
門番は二人の冒険者然とした様子に首を傾げながらも邸の中へ入って行く。
暫く待つと、家令と何人かが慌てて走って来た。アレクを見ると跪く。何人かは以前子爵と会ったときの顔ぶれだ。向こうもアレクの事を覚えていたのだろう。
「アレキサンダー第二王子殿下。このたびは・・」
「ああ、いいよ。楽にして。キール子爵に緊急に面会を頼みたい」
「実は、子爵は街に戒厳令を出した後、当屋敷に戻って来ておりません」
「戒厳令?」
「はい。実は2日ほど前に『踊り病』の患者が増えた為、街への出入りを制限したとのことでございます」
「それが本当なら、私はすぐにでも子爵に会わなくてはならない。馬を拝借したいのだが」
「街へ向かわれるのでございますね。それではここにいる者と共にお行き下さい」
アレク達は3名の騎士と共にアインステッドの街へ急ぐ。街の城門はピッタリと閉ざされており兵士がばらばらと出てきた。
「何ごとですか。ただ今は街の出入りは原則禁止となっておりますが」
年配の兵士が騎士に問いかけた。
「至急、子爵閣下に面会希望だ。開門してくれ」と馬から降りずに騎士が怒鳴ると、何人かの兵士が城門を開け出す。「このまま通る」といって一行は馬を走らせた。
中央通りを経て市庁舎前に出る。そこで騎士が馬を降り、「殿下、ここで少しお待ちください」といって市庁舎の奥へ消えていった行く。
暫く待つと中から子爵が小走りに出てきた。そしてアレクを見て跪く。
「アレキサンダー殿下。火急の用件と伺いましたが何か・・」
「子爵、立ってくれ。急ぎ話したいことがあるので部屋を用意してくれ」
「かしこまりました」
子爵が周りに控えている役人にあれこれ指示を出し、1室が用意された。
アレクは人払いを命じ、子爵と向きあう。
「キース子爵、まずは紹介しよう。こちらは結界の向こう側からこられた賢者シリウス様だ」
「シリウスと申します」といってシリウスは変装を解いた。
「何と・・・。貴方はエルフ族ですか」
「いや、私はハーフリング族という失われた種族の者です」