210. 再会 ⑤
「実は、私の故郷アインステッドで『踊る病』が流行っているようなんです。私はどうしても故郷に帰りたいのですが、最短で帰るには魔の森を通らなければならなくて」
「今の時期、魔の森を通るには危険すぎるという話をしていたんだ」
「そうなると、ヨルド川の渡河地点を見つけることだが・・」
サイラスとカシアス学院長は村長に近隣地図を持ってこさせた。
「ここでヨルド川が大きく蛇行しているが、この先の向こう側にスクラッドという村がある。この近くで渡河出来れば。フランシーヌ、フリージア、君達と私で川の水を一時的にせき止められないか?」
「少しの時間ならば可能でしょう」
「なら僕がアレクとエル達を乗せていくよ」とセイガが言うとシリウスが
「待て、僕も行くよ。オオカミ族に何かあった場合、僕がいた方がすぐに帰れる」
「じゃあ、決まりだね。あとロン、遠隔地からでも結界は張れる?」
「ううん、できないよ」とロンが首をふる。
「それに関しては心配ない。この村に関しては私が何とかしよう」とカシアス学院長が言う。
「ああ、君は闇魔法の使い手だったね。それじゃあお願いできるかな」
「任せてくれ。ただ、奴らを撃退するにはやはり力不足だ。何かあれば戻って来て欲しい」
「アレク、緊急の知らせがあるときは精霊のブロウを使う。やり方はしっているな」
「分かりました先生」
「では、明朝早く渡河準備に入る」
とんとん拍子に話が進み、エルはホっと安堵の息を吐いた。
「アレク、ズデーデン王立学院の先生は優秀なんですね」
「ああ。何と言っても俺が師匠と仰ぐ人だからな。安心して任せられる。あとはアインステッドがどれだけ被害を被っているかだが」
「それは着いてから考えようよ。アレクはそのスクラッド村から先は分かるの?」
「確か、スクラッド村からアインステッドと王都を結ぶ街道にでる道があるはずだ」
「なら問題ないか。ところでその村は美味しいものある?」
「そこまでは分からないぞ。何も無ければ俺が作ってやる」
「本当?やる気でてきた」
「ちゃっかりしてんな」とアレクはセイガの頭を小突いた。
次の朝、アレク達一行はヨルド川の大きく蛇行した岸辺にいた。
「対岸までは結構あるな。大丈夫か」
「取り敢えず全速力で走り切るよ」
「万が一の時は、ロン、結界をお願い」
「キュイ」
エルフの三人が水の精霊を呼び出した。
「この川の水を一時的にせき止めて欲しい。ルールリッヒ」
すると川の流れが止まり川底が見えた。途端に、巨大オオカミに変身したセイガが走り出す。
対岸まではあっという間だった。彼らが対岸にたどり着くと川の水は元の状態に戻った。彼らは対岸の三人に手を振り、無事を知らせスクラッド村へと走っていった。