208. 再会 ③
王都への急使を送った後、アレン達は被害に遭った村に出向いた。死体を放置するとアンデッド化するという話をエルフの二人から聞いた為だ。
その北辺にある小さな村は何ごともなく佇んでいた。但し、住人の姿は見当たらない。ただ所々に綺麗に白骨化した死体が散らばっている。賢者シリウスが杖を上げた。大きな魔方陣が現れ大穴が空く。そこへ白骨化した死体が次々に放り込まれていく。
「こんなものかな」賢者シリウスが呟きアレクの方を見た。
「アレク、この死体の山を燃やせるか」
「徹底的に燃やすならロンの方が良いでしょう。ロン、結界で周りを囲み、ブレスで燃やせるか」
「キュイ」といってロンは飛び上がる。穴の周りに結界を張り、上空から穴目掛けてブレスを吐きつけた。側から見ても分かるくらい高温になっていたのに違いない。結界の中はオレンジ色に染まり白骨化した死体は熱で溶けていく。とその時、魔の森から1匹の大蜘蛛が飛び出してきた。
大蜘蛛は敵意むき出しにしてアレク達を睨んでいる。すかさずエルが特大のファイアーボールを浴びせた。大蜘蛛は一瞬怯んだようだったが、再びアレク達を襲おうと身構える。エルが、2発、3発とすかさずファイアーボールを浴びせるが今度は身軽に躱し、白い何かをアレク達に吹き付ける。
「糸だ。あれに絡まると身動きがとれなくなるぞ」とシリウスが叫び、アレク達はそれを避けるために散会した。ロンが空からブレスで援護射撃をする。その一つが当たったのか大蜘蛛は苦しそうに蹲る。と見る間に体が崩壊していき夥しい子蜘蛛が現れる。
「逃すか。ロン、結界で奴を閉じ込めろ」
「キュイ」とロンが言って大蜘蛛の周りに結界が出来上がる。すかさずアレクが叫んだ。
「ロン、奴を焼き殺せ」
ロンが結界内に上空からブレスを浴びせた。声にならない声を上げ子蜘蛛と化した蜘蛛たちは消えていく。ふとアレクが何かを感じ振り向くと、子蜘蛛が1匹結界から逃れ逃げようとしていた。
「バインド」光魔法でその小さな子蜘蛛を拘束し、聖剣に力を纏わせその子蜘蛛を刺し貫いた。
そこにはコロンと小さな魔石が転がった。
「これが奴の正体か」
「ああ、間違いない。タランチュラの分身の一つだ」
「そうなると奴は力を蓄え、満を持して出てきたということですか」
「そういうことだ。アレク、君の聖魔法でこの魔石を消し去ってくれ」
アレクはその魔石に向け聖魔法を放つ。魔石はみるみる縮んで消えていった。
その頃、知らせを受けたサイラス・ナーガとカシアス学院長が急遽、オオカミ族の村へ向かっていた。