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202. オオカミ族の危機 ②

レンとカインの兄弟が暮らす村はオオカミ族の版図の中でも僻地にあたるごくごく小さな村だった。そんな村からズデーデン王立学院に通っているレンは村のホープだ。そのレンが帰ってくるなり大角鹿を仕留めたことで村では宴が開かれることになった。しかも大蜘蛛さえも倒し、魔石を奪えたということで彼は英雄に祭り上げられていた。


「いやあ、おめえすごいな。鹿だけじゃなくあんな大蜘蛛まで退治するなんて」

「いや、鹿は弟のカインが仕留めたんですよ」

「まあ、お前さんらはすごい兄弟ってことだな」

「カインも来年にはズデーデン学院に行くんだろ?村長も鼻が高いや」


村人達は久しぶりのご馳走と酒に酔いしれ宴は大いに盛り上がっている。


「はあ、これか?大蜘蛛の魔石は?立派なもんだ」

「このサイズだと王都で売れば半年分の稼ぎになるぞ」

「バカ、半年どころか1年分でも足らねえよ」


大いに食べ、飲んで村人達は満足気に家路についた。そして村人達が寝静まった深夜それは起こった。


かさかさかさという音と共に何千何万という子蜘蛛が姿を現した。手近の家に忍び込む。

「ギャアー」という叫び声が響き村人が一斉に起き上がる。レンとカインが外へ出てみると村中が子蜘蛛で覆い尽くされていた。

「な、なんだこれ」カインが息を飲む。

レンがふと家の中を見ると、棚に置いてある魔石が赤黒く光っている。思わずその魔石を取り上げ子蜘蛛たちに投げつけた。すると魔石に吸い寄せられる様に子蜘蛛達が集まり魔石に吸収されていく。みるみる内に魔石は子蜘蛛達に埋まりその固まりが大きく変化し始めた。


危険を察知し、レンはカインに怒鳴った。

「カイン、俺は奴らを食い止めるからお前は逃げろ」


レンは覚えたての火魔法ファイアーボールを作り、カインの逃げ道を作る。

「兄さん、でも」

「いいから、早く逃げるんだ。このことを長老様に報告しろ」

「わかった」とカインは言って、オオカミの姿に変身すると長老のいる村へ走った。ただ彼の体にも無数の子蜘蛛が張り付いていた。


カインは無我夢中で走った。夜が明け朝が来た。そしてその日の夕方になる頃、ようやく目的の村が見えた所で力尽きた。運良く村人が見つけ、長老の所まで運んでくれた。彼は息も絶え絶えになりながらも自分の村であったことを語ったが、彼の体に無数の子蜘蛛が付着しているのを見た長老は急いで彼を洗浄するよう命じた。彼の服を脱がし洗ってやると、無数の子蜘蛛の噛痕が見つかり、彼は別棟へと運ばれそこで治療を受けることになった。


「可哀想だが、奴は助からん。厳重に奴を見張り、異常があったら別棟ごと燃やせ」


その命令に配下は驚き、「そんな、何故です?まだ年端もいかないこどもですのに」と言葉を発する。


「恐ろしい事が起こった。とうとうその時が来たようだ。すぐに神狼(フェンリル)様を呼び戻さねば」


長老はすぐ奥の部屋に籠もり神狼(フェンリル)を呼び戻す儀式を始めた。





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