2.”始まりの街”
”始まりの街”は王都から最も離れた辺境の街である。正式にはカレン群アインステッドというのだが、誰もその名称で呼ぶものはいない。
ここは王領であり、代官としてキール子爵が治めている。主に黄金の道の起点以外に特筆すべき産業はない。ただ魔の森に接しているせいか魔獣が多く出没するため、田舎街にしては立派な冒険者ギルドがあり、冒険者もそれなりの数はいる。街の中心部にある冒険者ギルドの周りには、武具・防具を扱う店や、倒した魔獣の素材を扱う魔導具屋や薬屋などが軒を連ね、辺境であるにも関わらず質のいいものが売られている。街の中心部は、それらを買い付ける商人達である程度の賑わいをみせていた。
街はヨルド川に沿って広がり、その川岸には魔獣に備え堅牢な城壁が築かれいる。その川の向こうは魔の森であり、あたかも人間界と魔境との線引きがはっきりとなされているようである。川幅の一番狭い場所に石造りの古い橋があり、その橋の先に春分点と秋分点には黄金の道が現れるが、普段は森に覆われ行き止まりとなっている。
冒険者達はこの橋を使い、森の浅いところで魔獣を狩ったり、薬草集めをしているが、決して森の奥には足を踏み入れないようにしている。命の保障がないからだ。この魔の森には魔獣の他にも未知の生物や現象があり、悪くすれば未知の病を持って帰り、多くの人の命をも奪いかねない危険性をはらんでいる。
実際、過去に何度か疫病が流行った。たまたま森の奥に入った冒険者が発症し近くにいた者を巻き込んでみるみるうちにカレン郡全体に広がり、夥しい死者をだしたこともあった。
そんなことからも魔の森は恐れられ、ある一定以上の距離から奥へは踏み入れなくなった。
城壁とは反対側、街を通って反対側に街道があり、カレン郡都~王都へと繋がっている。この街道沿いには宿屋や食堂が建ち並び、春分点・秋分点には賑わいをみせているが、普段は閑散とした佇まいをしている。それを過ぎてしばらく行くと代官の屋敷があり、その辺りは閑静な住宅街となっていた。
エルはその閑静な住宅の一軒に住んでいる。
自分の表現力のなさに四苦八苦しております。