197. 魔王の足跡 ①
宿に帰ったアレク達は食堂を覗いて見たが、ジル達の姿はなかった。部屋に向かおうとしたが。セイガがお腹が空いたと言い出した。そういえば昼飯がまだだったなと思い、エルフの二人に問いかけた。
「お二人は昼食はお済みですか?」
「いいえ、まだです」
「じゃあ、ここで昼食を取りましょう。食べられない物はありますか」とアレクが聞くと、彼らは微笑み、
「お気遣い頂きありがとうございます。獣肉は食べられませんが鳥肉は大丈夫です」
「鳥肉料理を頼みましょう」といって、宿の者に鳥肉料理を注文した。
「僕、ロンを呼んでくる」といってセイガが部屋に上がって行った。
「貴方はエルフを見ても驚かないんですね」とフランソワーヌが言うと、アレクは「実は、私の学院の師匠がエルフだったんです」と答え「名前はサイラス・ナーガというんですが、ご存じですか」と聞いた。
「おお、サイラスの弟子でしたか。サイラスは結界の向こうに行ったきり音信不通でしたが元気でやっているようで何よりです」
「先生は一度結界を越えて帰ろうとしたようですが結界を越えた所で精霊の反応が無くなったので戻ったようです」
「精霊の反応が無くなった?」
「ええ、それで危険を感じて戻ったとのことでした」
沈黙がおり、フランソワーヌは何か考えを巡らせているようだった。
鳥肉料理が運ばれたところでセイガが人間型をしたロンを連れてきた。
「ロン、悪いけど結界を張ってくれないか。聞かれたらまずい事をこれから話さなきゃなないんだ」とセイガがいうとロンは「分かった」といってすぐ結界を張った。
「いい匂い。僕。お腹ぺこぺこだよ」とセイガは目の前の料理に早速がっつき出す。
「流石竜人族の王子ですね。見事な物です」
フランソワーヌは周りの結見て見てそう言った。それを聞いてロンはちょっと恥ずかしそうにしている。
「実は彼らと話していて懸念する事項ができたんだ」セイガは鳥肉を頬張りながらそう言った。
「それはヴァンパイアに関することですか」
「そうとも言えます。それは我々エルフの成り立ちとも関係してきます」
「エルフの成り立ちですか。どんな事でしょう」
「我々エルフは世界樹の守護としてこの世に存在しているということです。そして世界樹を脅かす者を絶えず警戒してきました」
そしてフランソワーヌは世界樹にまつわるこの世界の歴史を語った。その中に800年前に起こった大災厄の話も出た。
「その大災厄が魔王によってもたらされたことはご存じでしたか」