196. 再会
街に出て、アレクは聞いてきた宿屋を捜したがすぐに見つかった。クロックを宿に預け、中に入るとジル達が食堂にいた。
「よう!久しぶり」
「アレク!戻って来たのね。エル達は今、エルフ達の興業を見に行ってるわ」
「エルフ達の興業?」
「そうよ。エルフの夫婦が歌や音楽を披露しているの」
「へえ、どこでやっているんだ?」
「中央広場の南端に大きなテントがあるわ」
「じゃあ、行ってみるか。ああ、サンギ、クロムの子供が生まれるのが今晩くらいになりそうだって」
「わかりました。馬車を用意しときますね」
アレクは宿屋を出て、中央広場に向かう。中央広場は女王の戴冠式に向けていろんな出店が出ており、人々でごったがえしている。そこを器用にすり抜け南側に行くと目立つ大きなテントが目に入った。
「あれだな」と目星をつけて歩いて行くと、中から一際大きい歓声が聞こえ人々の歌声が響き渡った。それはこの国でもっとも好まれて歌われている『森の木と木こり』の歌だ。皆、手拍子や足踏みをしてリズムを取っている。暫くすると歌が終わり、人々がテントから出てきた。アレクは出てくる人々をすり抜けテントの内部を見た。
中央に舞台があり、二人のエルフがいた。エルはその二人と何やら話している。その隣にセイガがおり、アレクと目が合った。
「アレク!」とセイガは叫び、尻尾をブンブン振り回しながら飛びついてきた。
「アレクウ、寂しかったよ。僕、一緒に行けば良かったと何回思ったか」
アレクは飛びついてきたセイガを撫でながら「そうか。でも、思ったより早く聖剣が出来上がってね。予定よりも大分早く帰ってこれた」と言い、二人のエルフに目を向ける。
「こちらは?」
「申し遅れました。私はエルフのフランソワーヌ、そして妻のフリージアです。セイガ様から貴方様の事は伺っております」
「うん、識者フランソワーヌと言ってね、エルフに情報を届けるために各国を興業しながら回っているんだ」
「そうでしたか。私はアレキサンダー・ケン・シュトラウス、通称アレクと申します」
「ねえ、積もる話もあるから、宿屋に帰らない?エルフの二人も聞きたいことがあるだろうし」
「そうだな。そうだ、エル、クロムのお産が今晩らしいぞ。サンギに言って馬車を用意させているが」
「えっ、本当?急いでお城に行かなくっちゃ」
慌ててエルが走り出す。アレクとセイガ、エルフの二人はゆっくりと宿へ帰った。
歩いていると、美丈夫なアレクと美しいエルフに人々はささやきながら目で追った。そんなアレクもエルフも見つめられるのに慣れているのか意も介さずに宿の方へと進んで行った。