195. 聖剣製作 ⑥
その後試行錯誤を繰り返し、聖剣は約40回作動出来るようになった。続々と出来上がる剣に聖魔法を付与していき、ついに当初の目的の20本が出来上がった。
「さて、これを各国に割り振らなければならないな」シリウスは出来上がった聖剣を眺めてそう言った。
「まず、ドワーフの里に1本置いていく」
「ありがとうございます」
「あと、ララ、頼まれてくれないか?ズデーデン王国とシュトラウス王国に2本づつ送って欲しい。ああ、オオカミ族にも1本頼む」
「分かった。任せて」
「残りは結界の向こう側だな。14本か。アレク、これらを袋に入れてくれ」とシリウスは例の袋をアレクに差し出した。
「ラビ、助かった。これで獣人国の平安も保たれるだろう。これは礼だ」
シリウスは鋳物を何本か取りだした。
「こ、これはオリハルコンの鋳物・・・ありがとうございます」
「では、僕達は行くよ。ドワーフの民に感謝する」
「ララ、皆に宜しく言ってくれ。あと、いろいろありがとう」
シリウスが杖を挙げ魔方陣が回り出す。そして二人は獣王国に戻った。
女王の控え室に戻ったアレク達を見た侍従が急いで女王を呼びに行った。
「シリウス様、アレク様、お疲れ様でした。聖剣作りはどのようになりましたか」
女王ベアトリスは来るなり急いで聞いてきた。それだけ女王の中ではヴァンパイアのことが気がかりだったのだろう。
シリウスは袋から聖剣を取りだし、女王に説明仕始めた。
「まず子の聖剣の効力は40回。これを奴らに叩き付ければ間違いなくダメージを与えることが出来る。ただ、息を止めることができるのはその者の技量による」
「40回。その中で彼らに致命傷を与えなければならないということですね」
「手練れの物が持つ必要がある」
「なるほど。その剣は何本我が国に頂けるのでしょうか」
「4本だ。あと獅子、蛇、鳥に2本づつ」
「ありがとうございます。早速、獅子、蛇、鳥の大使にもこれを使わしましょう」
「ただ、使い切った後、聖魔法の使い手がいる場合は魔石に聖魔法の魔力を充填出来ればまた使用可能だ」
「わかりました。お二方共、お疲れでございましょう。お部屋をご用意いたしますのでごゆるりとこの城にご滞在ください」
「残していた私の連れはどうなっていますか」
「はい、ヴィルヘルム殿と従者の方はこの城に滞在して頂いております。その他の方は、街へ出ておりますが」
「ありがとう。街の方へ行ってみるよ」
アレクはそう言い、厩舎に向かった。そこにはクロックとお産を控えたクロムが繋がれている。クロックはアレクの気配を感じた途端、興奮しだした。
「ドウドウドウ。元気にしてたか。街まで頼むよ」
クロックは当然というように首を上下に振る。その様子を見ていた厩番はアレクに「クロムのお産が差し迫っております。エルさんにもその事を伝えて貰えますか」といい、クロムの腹を撫でた。
「分かった。伝えておくよ」といい、アレクはクロックに乗り城を後にした。