186. 聖剣製作 ③
それを聞いてアレクは驚いた。
「ラグさん、ケン・サクライをご存じなんですか」
「ごめんなさい。お爺様、目が悪くって。お爺さま、この方はケン・サクライ様ではないの。アレクさんよ」ララが駆け寄り説明する。
すると、ラグは白く濁った目を向けて詫びた。
「おお、すみません。あまりにもケン・サクライ様の魔力に似ているものだから」
「ラグはね、目が見えない分魔力の感知に長けているんだ」とシリウスが説明する。
「君の魔力がケン・サクライにそっくりだということだ。セイガが気に入るわけだ」
「どうぞおくつろぎ下さい」と言ってラビが近くのソファを勧めた。
「ラグ、君はケン・サクライにあったことがあるのかね」
「ええ、シリウス様。今から400年程昔になりますが。その頃は私はまだ目もみえていて、若く生意気盛りのドワーフでした」とラグは昔を懐かしむように言った。
「彼はどんな方だったのですか?」とアレクが言うと
ラグは「そうですね。背は余り高くなく、髪が黒くてこの世界では見たことの無い人間でした。ですが、彼の使う魔法や発明品は私らの度肝を抜くのに十分でした。すぐに私は彼の作る物に夢中になって。おおそうだ、これなども彼から頂いたものです。大分前に動かなくなりましたが」と言って着ているローブの腕から腕輪を見せた。
ーーーーこれ、腕時計じゃん。
「これは『時』を計る物だそうで、動いている時は重宝させてもらいました。残念ながら動かなくなってしまったのですが。どうやって動いているのか解明することが出来ませんでした」
ーーーークウォーツ時計だもんな。電池が切れたら動かなくなるし。しかも日本のメーカーだ。俺の時計も同じ種類だったしな。やはり、転生者だったか。しかも俺と一字違い・・・
アレクが自分の思考に陥っている間に、ラグは話を続けた。
「彼は突然、私達の里へ現れました。そう、賢者様が使う転移魔法のように。そして私達に革新的な技術を教え、来たときと同じように突然いなくなりました。まるで神かなにかのように」
「興味深い話だね。そうは思わないか、アレク」
「ええ、本当にそうですね」とアレクは同意した。
「ところで君達に頼みたいことがあるんだ」とシリウスは話を切り出した。
「聖剣作りを頼みたい。数は20振り。早急に必要なんだ」
「理由をお伺いしても?」
「ヴァンパイアという新しい種族が獣王国を始め世界征服を企んでいる。彼らは通常の剣で斬っても死なない。聖魔法しか効かないんだ。だから、君達が作る素晴らしい剣に聖魔法を付与し聖剣を作りたい。報酬は君達の望む通りに出すから、1ヶ月で仕上げてくれないか?」
「1ヶ月ですか。ですが聖魔法を使える者が・・・」とラビは渋面を作った。
「聖魔法使いはここにいる。このアレクがそうだ」