185. 聖剣製作 ②
「こ、ここは・・・」 アレクは驚いて辺りを見廻す。
岩山に掘られた無数の穴。その穴から煙突が出て、絶え間なく煙が出ている。あちこちからカキーンカキーンと言う音が響き渡っている。
「ドワーフの里さ」
「えっ、でもあの結界を越えて・・・」
「僕はね、あの結界が造られる前からここに来ているから。でもよく結界を越えたことが分かったね」
「実は、私はズデーデン王国に留学しておりました」
「ズデーデン王国ってこの里に近接した王国だね」
「ええ。多くのドワーフが付与魔法を習得しに留学していたんです」
「そうか。付与魔法を。それはケン・サクライが編み出した魔法だね」
「そうでしたか」
「そもそも魔石を使って物に魔法を掛けるなんて発想はその頃にはなかったからね」
「アレク!!」驚いた声にアレクは振り返った。見ると一人の女性のドワーフが驚いたようにこちらを見ている。
「ララ?」
「どうしたの?貴方、国に帰ったと聞いたわ」
「いや、今は獣人国にいるんだ。賢者シリウスと共にここに来た」
「賢者シリウス様?大変、お父様に知らせなきゃ」とララは慌てて踵を返すと走って行った。
「知り合いか?」
「ええ、留学中に知り合ったんです。確か私の1つ上で付与魔法を学んでいました」
「それは都合がいい」
彼女と共に初老のドワーフが走って来た。来るなり跪いた。
「賢者シリウス様でしょうか。私はこの里の長を務めるラビと申します」
「ラビ、実はお願いがあって僕らはここへ来たんだ」
「さようでございますか。ここでは話も出来ませんので我が家にお越し下さい。父も喜びます」
ラビの案内で岩山に掘られた穴の一角に進む。その穴の中を進むと大きな扉があった。ラビは扉を開けると彼らを中へ招き入れた。中は広々としたホールとなっていた。
「これはすごい」見回しながらアレクが言った。
「ドワーフは地の民。地の中に住み、地からの祝福を形に変える術を持つ民です」
ララが胸を張って言った。
「こちらにどうぞ」とラビがさらに奥の扉を開けると居心地の良い居間がそこにはあった。そこにかなり年老いたドワーフが座っていた。
「おお、賢者シリウス様。一瞥以来です」と言って立ち上がった。
「久しぶりだな、ラグ。変わりはないか」
「少々年老いた以外は変わりはございません」
「これはアレク。今、彼は獣王国にいていろいろ手伝ってもらっている」
ラグは視線をアレクに向け、驚いた顔をした。
「ケン・サクライ様、貴方様は随分前に亡くなられたと聞いておりましたが」