184. 聖剣製作 ①
城内の大広間に帰った彼らは、早速ヤガであったことを女王へ報告した。
「皆様、ご苦労様でした。ライド伯爵もさぞ胸をなで下ろしていることでしょう。ところで賢者様、この後はどうされるのですか?」
「僕はアレクと一緒に聖剣作りに取りかかろうと思う。今後も彼らが襲ってこないとも限らないし。予定では女王の戴冠式に間に合わせるようにしたい」
「分かりました。ぜひ、宜しくお願いします」
女王の控え室を出ると、サンギが待ち構えていた。
「アレクさん、姉さん達がベアレスに到着しました」
「そうか。エル、お前どうする?王城にいてもいいし・・・」
「私、ジル姉さんのところへ行きます。ここにいてもすることないし」
「わかった。で、ウィルとヴィルヘルムだけど・・」
「ああ、彼らは女王に願い出て家庭教師をつけて勉強していますよ。ああ、そうだ。もう一つ報告があった。エルさんの馬のクロムなんですが、どうも子供が出来たようです」
「えっ」
「どうもお腹が大きくなったので、獣医にみせたところ妊娠しているようです」
「じゃあ、まさか親父は・・・」
「ええ、クロックに間違いないでしょう」
「あいつ・・、でもまあ、何にしてもクロックとクロムの子であれば良い子に違いない」
「できれば、子馬が生まれてすぐ移動は避けたいと」
「そうか。まあ女王の戴冠まで1ヶ月以上あるし俺も聖剣製作に入るから2~3ヶ月はベアレスに滞在することになるな」
その後、アレクとエルは厩舎に行った。久しぶりに会ったクロックはアレクを見て喜んだ。興奮する彼をなだめて鼻面を撫でてやりながら「クロック、お前は父親になるんだぞ。もう少し落ち着いたらどうだ」と言い聞かせると、彼の言葉が分かったのか「ヒヒーン」と鳴いて大人しくなった。
エルはクロムを見て、「ワア、お腹が大きい。もうすぐお母さんだね」と首筋を撫でてやると嬉しそうに首を上下に振る。
「アレクは聖剣製作で忙しいでしょ?その間、私がこの子達を見守るね」
「頼めるか?」
「うん、任せて」
そこへ厩番が来て、彼らに挨拶をした。
「この2頭は素晴らしい馬ですね。この2頭の子なら絶対良い子が生まれますよ。あと1ヶ月程で生まれてくる予定ですが、よく獣医先生とも楽しみだと話しているんです」
「そうですか。お産の時は宜しくお願いします」とアレクが言うと
「任せてください」と言って彼は笑った。
厩舎を出て、城内に帰ってくるとサンギが馬車で待っていた。
「じゃあ、アレク、ジル姉さんのところに行ってくる。聖剣製作頑張ってね」
「あれ、ロンはどうした?」
「ああ、セイガとどこかに行ったけど」
「キュイ」と馬車の中から顔を覗かせた。セイガも馬車に乗っている。
「セイガは賢者のところへ行かないのかい?」
「場所は分かるから、気が向いたら行くよ」
「そうか。ジル達にもよろしく言っておいてくれ」
馬車が走り出し丘の斜面を下っていく。後ろを振り向くといつ来たのか賢者シリウスが立っていた。
「じゃあ、僕らも行きますか」といい杖をあげた。魔方陣が回り出し彼らの姿が消えた。