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183. ヤガの怪異 ③

3人目の犠牲者をドブ川に捨て、二人は満足気に家路についた。


「今日は大漁だったね。あそこなら見つかる心配もないし、日を置いて又行こう」

「ええ。なんか力が漲ってくる。ねえ、屋根伝いに帰らない?」

「いいね。獣人でいたときはこんなに身軽に動けなかったし」


二人は軽くジャンプし、屋根に乗った。

「ふふふ、屋根の上を歩くなんて。見える景色も違ってサイコー」

彼らはヒョイヒョイと屋根を伝っていく。



「来た」

物陰から赤い目の少女が呟く。エルだ。

「ロン、お願い」「キュイ」と鳴いてロンが飛び出していく。


ロンが飛んでいく様子を二人は不思議そうに見やった。

「何だ、あれ」

「鳥でもコウモリでもないわ」

そして物陰に佇んでいる一人の少女を見つける。

「誰?あの子」「僕達のお仲間か?なら挨拶しないと」


二人は瞬時に地上に降り、エルの前に現れた。それと同時にエルの目が光った。雷に撃たれたように二人は硬直し、エルを見つめた。エルはゆっくりと彼らに言った。

「貴方達、今日は何をしてきたの?」


「今日は狩りをしてきました」

「狩り?」

「はい。娼婦二人と酔っ払い一人」

「その人達はどうしたの?」

「ドブ川に捨てました」

「どうしてそんな事をしたの?」

「だってものすごく喉が渇いて」

「黒服の人達が、私達は生まれ変わったから何してもいいって」


「はあ」エルは盛大な溜息を吐いた。

「そんな訳ないでしょ。良心は痛まなかったの?少なくとも貴方達の同胞でしょう?」

「いや、もう俺達はヴァンパイアに生まれ変ったんだ」

「そうよ。私達は最強の種族で何をやっても許されるってあの人達が言ってたわ」


そこへアレク達が走って来た。「エル!」

思わず後ろを振り返って、エルは自重した。危うく灰にしてしまいそうだった。


「こいつらか?」

エルがこっくりと頷いた。「被害者は三人。近くのドブ川に遺体を捨てたって」

「取り敢えず伯爵のところへ連れて行こう。バインド」

アレクは光魔法で彼らを拘束した。シリウスが転送の魔方陣を回し始める。


伯爵邸に着き状況を話すと伯爵はすぐ兵をそのドブ川に向かわせた。彼らの供述通り遺体は三人。どれも干からびて無残な姿だった。伯爵は秘密裡にその遺体を処分する指示を出した。


「皆様、ありがとうございました。こんなことが続いたら街中が大騒ぎになっていたことでしょう。こやつらはもう我が領民ではありません。処分をお願いします」


「なんでだよ。俺らはヴァンパイアで偉いんだ。何をしても許されるって・・」

「私達は死なないわ。どんなことをしても無駄よ」

光魔法で拘束されながら彼らは叫んだ。


「伯爵にも見ていてもらう必要があるな。そこの騎士、こいつらを斬れ」シリウスは命令を下した。

騎士は彼らを斬った。呻いて倒れたが、そのうち笑いながら立ち上がった。


「ははは、俺達は最強だ。そんなもので死ぬか」


「こ、これはやっぱり賢者様のおっしゃったとおり・・」

「見ただろう?こいつらは聖魔法の剣でしか斬れない。次、アレク斬ってみて」


アレクは剣に聖魔法を纏わせる。それを見た彼らは恐慌をきたした。

「い、いやだ、いやだ。聖魔法使いがいるなんて。死にたくない」


慌てて拘束から逃れようとする彼らをアレクは容赦なく斬った。すると斬ったところから灰になり崩れ落ち、灰の山が残るばかりとなった。


「伯爵、僕とアレクで聖魔法で作った剣を女王に渡す約束をしている。ここは街道の要だ。女王にいって幾本か分けて貰ってくれ」

「御意」伯爵は跪いた。


「さあ、帰ろうか」

シリウスは杖を持ち上げ魔方陣を作った。魔方陣が回り出し彼らは帰っていった。












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