18.ペンダントの記憶 ⑩
夜が明けきらない薄暮の中、二人は帰ってきた。
「おお~い、大丈夫だったか?」丘の上から駆け下りてきたヨハンにシンは
「ああ、問題ない。野盗は殲滅してきたよ」
「殲滅?たった二人でか?」ヨハンは真剣な面持ちで「前から聞こうと思っていたんだが・・」と言いかけた途端に
「わかった。だけど朝食を食べながらにしないか。ユイもお腹ぺこぺこだろう?」
丘の麓につくとさっそくシンはテーブルや椅子を空間から取りだし朝食の準備を始めた。
「パンにサラダ、スクランブルエッグにソーセージ、あと野菜スープ、こんなもんかな。さあ、座って」
「おいおい、何回驚かせたらすむんだよ」と言いながらもヨハンは手近のパンを手に取った。
「僕らのことを知りたいんだろ?ヨハンはいい奴だ。それに世話にもなっている。だから全部話すよ。ただ、信じるかどうかは君次第だけどね」
そしてシンは話はじめた。魔法に失敗して異世界へ来てしまったこと。ユイに助けられたこと。ユイの過去。ユイに請われて魔法の指導をしたこと。いつしかユイを愛し夫婦になったこと。そしてこの世界の果てに『エルドラド』という土地があり二人でそこへ行こうとしてこの国へ立ち寄ったことなどをたんたんと語った。
「そう、だから僕は異世界の魔法使いでユイはこの世界で魔法を使える異端児だ」
「そうか。ありがとうよ。なんだかとんでもねえこと聞いちまったな」
「だから僕らはただの通りすがりの旅人のはずだったのだけど・・・」
「うん?」
「いいかい、ヨハン。これから重要な話をする」
「この国の王は魔石を掘り出して何かをするつもりだと聞いたが間違いないか」
「ああ、そのため罪の無い平民が何百人となく鉱山送りになっている」
「魔石は魔法の知識の無い人間が扱うには危険すぎる。そもそも魔石は空中の魔素が長い年月に固まってできた結晶だ。魔石の採れる所に魔獣がうようよいるっていってたろう。それもそのはず、魔獣は魔石によって創られるのだから。さらに悪いことに送りこまれた人間の恨み辛みの負の感情に呼応してその周辺が魔素溜まりになる。そしてこの魔素溜まりから魔獣より恐ろしい魔物が創られるんだ」
「魔物?」
「ああ。魔獣の何倍もの大きさで力も強く普通では太刀打ちできない。尚悪いことに、死んだ人間も魔物になるんだ。彼らは人間に恨みをもっているから人間をみたら襲ってくる」
「なんてことだ」
「それに、魔法の知識なく魔石を利用しようとすれば下手をすれば空気中の魔素がなくなり作物がそだたなくなる。さらにそれがすすめばこの世界は崩壊する」
「おいおい、冗談じゃねえぜ。なんとしても止めねえと。・・・そうだ、男爵様に今の話をしてみねえか。あのお人は元は辺境伯様だったし、ものの道理の分かった人だ」
「でもどうやって話を通すんだ?」
「俺に任せてくれ。伝手がある」