179. 転移魔法
「賢者シリウス様、女王陛下がお呼びです」
談話室で談笑しているところに侍従が呼びに来た。
「誰か引っかかったのかな」と言いながらシリウスが立ち上がる。アレクとセイガも立ち上がった。
「もし、くだんの闇ギルドの者だとしたらエルを呼びましょう」とアレクが言い、侍従の方を向き、「悪いがエルも呼んできてくれるかな」と頼んだ。
侍従に連れられ女王の控え室に行くと、女王は深々とお辞儀をした。
「シリウス様、お呼び立て致しまして・・」
「うん、いいよ。それより、結界に誰か引っかかったのかな」
「はい。怪しい者が3名。状況から察すると闇ギルドの者かと」
「彼らは今、どうしている?」
「ご命令通り、その場で拘束し待機させています」
「それじゃあ僕達もそこへ行きますか」
「ちょっと待って。エルが一緒の方がいいと思うんだ」とセイガが待ったをかけた。
「僕達が尋問しても彼らは口を開かないと思うんだ。でもエルなら・・」
そこへエルがロンと共に入って来た。
「お呼びと伺いましたが」
「ああ、エル、闇ギルドの者が結界に引っかかったみたいなんだ。力を貸してくれないか」
「ええ、勿論いいです」
「では、結界の場所まで飛ぼうか」
賢者シリウスが杖を頭上高く振り上げると、大きな円陣が現れた。「さあ、魔法陣の中に入って」
皆が魔法陣の中に入ると、魔法陣がグルグルと回り始め気が付いた時は森の中にいた。
「賢者様、これは転移魔法ですか?」驚いてアレクが尋ねるとシリウスは大きく頷き
「転移魔法を知っているのか?」と逆に聞いてきた。
「言葉だけなら。でも実際、使った所は初めて見ました」
「成程、そうか。追々君にも教えてあげよう」
「はい。宜しくお願いします」とアレクはのめり込む勢いで頭を下げた。
掴まった闇ギルドの者達は三人。結界に取り込まれて身動き出来ないでいる。その周りに熊族の兵士が取り囲んでいた。兵士は彼らを見ると一様に跪いた。
「三人か。結界を解いてやろう」
シリウスは杖を結界に触れさせた。途端に結界は解除され三人が出てきた。アレクは素早く出てきた三人を光の輪で拘束する。
「ほう、光魔法か。それも無詠唱で」とシリウスは感心する。
エルが進み出て彼らに問いかける。
「誰の差し金でここに来たのですか。言いなさい」エルの目から赤い光がほとばしる。
彼らは一瞬固まり、そして答えた。「ヤコブ枢機卿です」
「目的は?」
「我らの仲間を熊族に創り、熊国を侵略するために」
「今まで何人創ったの?」
「三人です。ただこの王都に入ることが出来ずに周辺の村や街を襲いました」
「あのロブとかいう下男もお前達の仕業ね」
「はい」
「後の二人はどこ?」
「ヤガの街です。小売商の夫婦がいたのでその者達を」
「その者達の特徴と居所は」
「ヤガのサリタ通りにある小間物屋です。若い熊族の夫婦でした」
女王はそれを聞きヤガに急ぎ伝令を飛ばした。