178. 賢者シリウス ③
「ハーフリング族?」
「そう。かつて僕らはそう呼ばれていた。エルフのように長い耳と長寿を持ち、けれど身長が低いためそのように言われていた。けれど、800年前の大災厄で僕を除いて皆、死んでしまった。聖ピウス皇国の先にある死の砂漠が昔、僕らが住んでいた所さ。昔は、緑溢れる豊穣な土地だった。けれど、今は人をよせつけない砂漠になってしまった。僕は、聖ピウス皇国が、僕らと同じ過ちを犯しているのではないかとヒヤヒヤして見ているよ」
「同じ過ちですか」
「魔石を使って新たな生命を産みだそうとしていることだよ。その点、ケン・サクライは偉いね。魔石は使うが生物に対して使うのでは無く無機物に対してその効能を生かしているのだから」
「この獣王国はね、シリウスと神狼が作った国なんだよ。ばらばらだった獣人達を部族ごとにまとめ国として創りあげたんだ。だから王が代わる時にはシリウスと神狼の承認が必要になる」
「そうか、それでお前はここへ来たんだな」
「そういうこと」と言ってセイガは皿に乗っている菓子を食べた。
「ところで私は、シン・サクライに頼まれてある物を持っている。エルが聖女と言うならば私も旅に同行することは出来ないか。渡したい物があるんだ」
「お話って何かしら」
エルは人間型を採っているロンに話しかけた
「んー、魔法の話か何かじゃない?それよりこのお菓子美味しいよ。蜂蜜がタップリ入っていて。流石、熊国だね。それより何か気になるの?」
「別に、ただ、何となく・・・」
「兄様、このお菓子美味しい」
「良かったな。アレクさんが賢者シリウスに闇ギルドのことを話すだろうから、きっと守りが堅くなるだろう」
「賢者シリウスってどんな人なんだろう。身長は僕と同じ位だったけど」
「何でも大災厄を生き延びた人だと聞いた」
「大災厄?」
「大昔、黒い魔物が襲ってきて一国を全滅させたんだ。聖ピウス皇国の向こうにある死の砂漠がそうだと聞いたことがある」
「凄い人なんだね」
「本当にな。彼なら聖ピウス皇国の荒れ地を何とかしてくれるかもしれない」
各々が部屋で寛いでいるとき女王の元へある知らせが入る。結界の森に怪しい者が引っかかったと言う事だ。
「すぐに賢者シリウス様を呼んできて」