177. 賢者シリウス ②
「君は聖女とどういう経緯で出会ったんだ」
談話室には入りお茶を飲んで一息入れたところでシリウスはアレクに切り出した。
「本当に偶然知り合ったんです。私が恩師の為に黄金の道を進もうとしている時に、エルもまた黄金の道に挑もうとしていました」
「黄金の道?」
「ご存じだと思いますが、春分点・秋分点の年2回結界が開かれ道が現れます。その道のことを向こう側では『黄金の道』と呼んでいるのです」
「なるほどなあ。じゃあ、君達は結界の向こう側で知り合ったわけだな」
「それだけじゃないよ。僕もロンも結界の向こう側の魔の森で出会ったんだ」
「そうなのか?だが竜王子まで・・・」
「ロンはね、闇ギルドに追われて結界を越えたんだ。そこへ居合わせたのがアレクとエル。僕はロンが越えたときに衝撃がすごかったから見に行ってそれでアレク達に会った」
「それで我々は結界を越えた後、ロンの母国に行ったんです」
「そりゃあ、竜王の婆さんも喜んだことだろう。しかし、闇ギルドがそこまで力を持っていたとは」
「実は竜人国でも、獅子国のように精神を狂わせる薬物が闇ギルドによってもたらされ、蔓延していました」
「だけど僕らが駆逐したんだよ」
「実はエルはまだ聖女として覚醒していなかったのですが、闇ギルドいや、ヴァンパイアと対峙したときに目覚めたのです。彼女が目覚めなかったら危なかった。私達が彼らを駆逐した後、竜王が結界を張り闇ギルドの者が竜人国に入り込まないようにしました」
「ああ、それでか。いきなり竜人国に結界が張り巡らされたのは」
「これは我らも結界を強化しなければならないな。精神攻撃とはまた痛いところを突いてきた」
「ところで君は人間だろう?魔法はどうやって覚えたんだ?結界の向こう側では魔法を使える人間が多くいるのか?」
「残念ながら私以外、魔法を使える人間は見たことがありません。ただ、向こう側の人間は魔石を利用していろいろな物に応用しています」
「ああ、向こう側の人間は魔石の扱いに長けていると聞いたことがある」
「我がシュトラウス王国の礎、ケン・サクライがその大元を築いたと言われています。また、彼は偉大な魔法使いだったとも」
「ケン・サクライか。その名は聞き及んでいる。向こう側に遊びに行った神狼が教えてくれた。人間の凄い魔法使いがいると」
「アレクはね、そのケン・サクライの生まれ変わりじゃないかって僕は思うんだ」とセイガはアレクを見ながら言った。
「それにね、アレク自身、こことは違う世界の記憶も持っているらしい。そういことも含めて面白い人間なんだ」
「ふふふ、相変わらず神狼は変った物好きだね」シリウスは声を上げて笑った。
「ところで、貴方も獣人ではないし、エルフとも違う。どの種族の方なのですか?」
「僕はこの世界でただ一人となったハーフリング族さ」