176. 賢者シリウス ①
「神狼様ご一行が到着されました」
侍従が女王を呼びに来た。急いで謁見の間へと向かう女王と共に賢者もやけに嬉しそうに付いて行く。
アレク達一行は城に着いてすぐ謁見の間に通された。
女王はセイガを見るとすぐに駆け寄ってきて膝をついた。
「神狼様、知らぬ事とは言えご迷惑をおかけ致しました」
「ん、何?迷惑なんてなかったけど」
「私が出した勅令により兵士が尋問をしたと伺いました」
「ああ、そのこと。ライド伯爵が取りなしてくれて何もなかったよ」
「さようでございますか」女王は安堵の息を吐く。
「やあ、君が新しい神狼だね」と女王の後ろから声がかかった。
ふと見ると、小柄な少年がにこにこしながら長い杖を持って立っていた。
「賢者シリウス」
「久しぶり。君に会えて嬉しいよ。僕を覚えていたんだね」
「勿論、代々記憶は受け継がれているんだ。僕も会えて嬉しい」とセイガは大きく尻尾を振ってシリウスの元へ駆け寄っていった。
一頻り旧交を温めた後、賢者シリウスはアレク達の方を向いて「君の新しい友人達を紹介してくれるかな」
「それじゃあ、彼はアレク。魔法使いなんだ。僕の契約者でもある」とアレクの方を向いて言うと「アレキサンダー・ケン・シュトラウス、通称アレクと申します。私も賢者シリウスに出会えて嬉しい限りです」とアレクが答えるとシリウスは「成程、神狼が選んだだけある。魔力量が尋常ではないね」と言ってエルに目を向ける。
「私はエルと申します。私は今は亡きユークリッド王国の聖女と呼ばれる存在みたいです」とそこでロンがポーチから顔を出し、人間型に変身する。
「僕はロン。竜人国の第二王子だ。そしてエルと契約しているんだ」
「これはこれは。聖女様に竜王子様ですか。こちらも凄い魔力量だ」
「私はウィル。こちらのユークリッド王国の王子ヴィルヘルム様の付き人をしています」
「ヴィルヘルムです。宜しくお願いします」とペコリと頭をさげる。
「ああ、貴方方も尋常でない力があるとお見受けする」とシリウスはしきりに感心している。
「最後になりましたが、私はいたって普通の獣人でサンギと申します。獅子国の王立研究員です」
「いや、皆さん、ここまでお疲れ様でした。ベアトリス、僕はアレクとセイガに話がしたいが構わないだろうか?」
「勿論、それでは談話室を空けましょう。その他の方々は各自お部屋にご案内するのでお寛ぎ下さい」
アレクとセイガを残して、一行は侍従について部屋に向かった。
「さて、僕らも行きますか」
シリウスはアレクとセイガを連れて談話室に向かって行った。