172. リーゼ村の奇病 ③
アレクとセイガがロンの誘導でやって来たのはそのすぐ後だった。
「アレクさん、こいつが妙な病気の原因です」ウィルは彼を指して言った。
「じゃあ縛ってマドラス隊長の元へ連れて行くか」と光の輪を出し縛り上げる。
ロブはキョトキョトとまわりを見廻し叫んだ。
「何だよ。俺は悪くねえぞ。あの人が言ったとおりにしただけなんだ」
「あの人?」
「ああ、闇ギルドの者と思われます」
「やはりな。ほら、行くぞ。暴れても無駄だ」
アレク達は彼を引き立ててマドラス隊長の元へ行った。
村長の宿屋ではヴィルヘルムがアレク達が見回りに行ったことを事前に話していたので、マドラス隊長はじめ騎士団が帰りを待っていた。
アレク達が男を捕縛して帰って来たのを見た村長は声を上げた。
「ロブ、お前・・・」
「村長はこの男を知っているのか?」とアレクが聞くと村長は
「はい。この男は隣の宿屋の下男です。いったいこの男が何をしたんです?」
「十字屋へ忍び込もうとしていたのを捕まえた。女将さんを殺すつもりだったようです」
「何ですって!何だってまたそんな大それた事を」
「訳を話すから、中に入れてくれないか」
「失礼いたしました。どうぞ中へ。すぐ、お茶の用意をさせます」
居間に通されそこでマドラス隊長の前に男を突き出した。
「村長、悪いが暫く隊長と我々だけにしてくれないか」
「分かりました」
「マドラス隊長、病の原因が分かりました。この男です」アレクはマドラス隊長の方を向いてハッキリ言った。
「この男が原因ですか?でも・・・」隊長は不思議そうな顔をしている。
「隊長はヴァンパイアという種族はご存じですか?」
「ヴァンパイア・・・いえ、存じ上げません」
「聖ピウス皇国は人間の国と思われていますが、実はヴァンパイアの国なのです。人間は彼らに家畜か奴隷として飼われているにすぎません」
「えっ、本当ですか」
「見た目は人間ですが本質的に違います。特に彼らは血を欲するのです。更に悪い事に彼らは中々死にません。傷を与えたとしても立ち所に治ってしまう。ご覧に入れましょう」
そう言ってアレクはロブを一太刀で斬った。ロブはうめいて倒れたが程なく傷は癒え、喚いた。「いてえ!なにすんだ!」
マドラス隊長は恐ろしい者でも見るようにこの男を見た。
「こ、これは・・」
「お分かり頂けましたか」