170. リーゼ村の奇病 ①
それから3日後、ベアレスから迎えの一行がヤガへ着いた。
「神狼様、ベアレスからお迎えの一行が到着いたしました」
家令のチザンがアレク達に一行の到着を伝えに来た。
「さあ、行きますか」
アレク達は迎えの一行が待つ階下へおりていった。
迎えの一行は居間で待っていた。
「お初にお目に掛かります。私は陛下よりベアレスまでのご案内を仰せつかっております近衛隊長のマドラスと申します。宜しくお願い致します」
「僕はセイガ。神狼だ。ベアレスまで宜しくね」
「私はアレキサンダー・ケン・シュトラウス、シュトラウス王国の第二王子です」
「僕らは結界の向こう側から来たんだよ。だから人間といっても聖ピウス皇国とは関係ないんだ」とセイガが補足する。
「そうだったんですね。こちらの不手際で皆様にご迷惑をおかけしました」とマドラス隊長が頭を下げる。「そしてライド伯爵にも陛下からお詫びのお言葉を頂いております」
その後一行はライド伯爵邸を後にし、ベアレスへと向かった。近衛騎士に前後を固められ、進んで行くと通行人は何者だとでも言うようにアレク達を見る。
「こうして見られるのは慣れていなくて」サンギは馬上からアレクに声をかけた。
「まあ、これも慣れだ」アレクもクロックの上から返す。
やがてヤガの街を過ぎ両側は鬱蒼とした森へと変っていく。これからベアレスまではこの森林が続いていく。街道を進んで行くと、途中リーゼという宿屋だけを生業とした村があった。
このリーゼには最近、奇妙な病が流行っているという。最初は貧血かと思われる症状があらわれ、そのうち脱力感に襲われしまいに動けなくなり死に至るという。恐ろしいことにその死体は水分が抜け落ちミイラのように干からびているという。
この村には十数軒ほどの宿があるが、宿に泊まる客にも影響が出ているようだ。
「申し訳ありませんが、ベアレスまで宿泊できる場所はここリーゼしかないのです。もし、体調が悪くなった場合はすぐお知らせください」マドラス隊長は申し訳なさそうに頭を下げた。
「流行病ではないのですか?」
「いや、そんなに被害は出ていないのです」
「そうですか。体調が悪くなったらすぐお知らせします」とアレクは言い、馬車の方を見た。
ウィルとエルは顔を見合わせ頷いた。彼らはその原因が何であるか薄々感づいているようだった。
一行は村長の経営する宿に泊まることとなった。
「いらっしゃいませ。私がリーゼ村の村長をしておりますカイルと申します。この度はご宿泊頂き誠にありがとうございます」
村長が宿の外に出てきて挨拶をした。
「世話になる。ところで村長、例の病はまだ続いているのか?」
「はあ、一昨日も一人、その病で亡くなりました。今のところ私の宿では被害が出ていないのですが、村の者は次はどの宿が被害に遭うかと恐れています」
「困った事だな。被害者が多ければ国としても対策に乗り出すだろうが」
「原因がわかればいいのですが」
その夜、リーゼで一泊した一行はある出来事に遭遇した。