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165. 熊族の国 ①

峠を越えて道はゆるい下り坂になる。相変わらず道の両側は鬱蒼とした森が続いている。どこかでカコーンカコーンと小気味よい音が聞こえてきた。


ヴィルヘルムは振り返り「兄様、あの音は?」と聞くとジルが代わって答えた。

「あれはね、木こりが木を切っている音だよ。熊族はがたいのいいのが多いから木こりが多いのさ」

「がたい?」

「そう、体がバカでかいという意味。こーんな大男がぞろぞろいる」とジェスチャーを交えて説明をする。

「何故、木を切っているの?」

「そりゃあ、それで家を作ったり、家具を作ったりするからさ。熊族は木工産業が盛んだからね」

「そうなんだ。あ、わあ、すごい」


森を抜け馬車は一面の花畑に出る。その光景にヴィルヘルムはうっとりする。

「それとね、熊族は養蜂業も盛んなんだよ」

「ようほうぎょう?」

「そう。蜂を飼っているんだ。蜂蜜を採るためにね」

「へえ、じゃあ甘いお菓子も一杯あるかな?」

「街に着いたらお菓子屋さんを覗いてみようか」とマルタ司教がいうと顔を輝かせてヴィルヘルムが頷いた。


花畑を過ぎると今度は牧場が見えてくる。ヴィルヘルムは移りゆく景色に釘付けだ。そんな彼を見ながらマルタ司教は「熊国は豊かな国ですね。こんな景色は聖ピウス皇国では見られない。枯れた原野が続くばかりです」と悲しそうに言った。


エルはペンダントの記憶を思い出しながら、「昔は聖ピウス皇国も豊かな土地だったのじゃありませんか?」と尋ねると、「全て、魔石を採りだしたせいです。土地の魔力が失われ、緑の大地が茶色の大地になってしまいました」


「どうして魔石をそんなになるまで大量に採掘しているのですか」

「それは、彼らの野望の為です。魔石を使い新たな兵器を作ろうとしているのです」

「野望?」

「この世界をヴァンパイアの支配する世界にしようとしているのです」

「そんな」

「彼らは選民思想に凝り固まっている。不死であり能力的にも優れた彼らがこの世界を統治するのに相応しいと」

「民を虐げ、大地を枯らす者が統治者であるはずがありません」

「僕も聖ピウス皇国がこんな素敵な国になったらなと思う」


遠くに街並みが見えてくる。


「あれが今晩泊まるパディの街だ。可愛い家が多いだろう?全部木造で出来ているんだ」


相変わらず外の景色に釘付けになっているヴィルヘルムは頷いた。


首都ベアレスまではあと3日の行程だ。












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