162. 闇ギルドの呪い
馬車を降りてきた二人に向かってセイガは走りより尋ねた。
「ねえ、何があったの?馬車が紅く光ってたんだけど」
「うん、セイガ、”ウィル”の血の縛りから解放してあげてたの」とエルが言うと
「血の縛り?あっそうか。やっぱり彼はそうだったんだね」
アレクは網に捕らわれている闇ギルドの者達を眺めた。彼らはもう、もがいては居らず静かにしていた。アレクは光の網を外し静かに問いかけた。
「君らが闇ギルドの者達だと言うことは分かっている。どんな命令を受けたんだ?」
しかし彼らは黙ったままだ。アレクは溜息を吐き再び問いかける。
「どういう命令を受けている」
彼らの内の一人が顔を上げ、口を開きかけた。途端、電撃でも受けたようにその場にがっくりうなだれる。アレクは急いで彼の元に駆け寄るが、もう息はしていなかった。
「だめだ。もう息はしていない。恐らく彼らには呪いが掛けられている」
残った三人は何も言わず俯いている。
「エル、この呪いをなんとか出来るか」
「無理よ。どんな呪いかも分からないし」
「俺も呪いは詳しくないんだよ。こいつらこのままこうしていても口を割らないだろうし。う~ん、どうしようかな。奴が目を覚ますのを待つしかないか」
「貴方達は何で闇ギルドなんかに入ったの?」
「・・・」
「やっぱりだめかあ。しょうがない、熊族の国に連れて行って役人に渡すか」
「アレク、僕、お腹減ったよ。何か作って」セイガが切なそうにアレクを見上げた。
「ああ、そろそろ日も落ちるし何か作るか」
「やったー。久しぶりのアレクの料理、楽しみ」と尻尾を振りながらジル達の方へ向かう。
「今日の夕飯、アレクが作ってくれるって」
「本当ですかい、そいつは楽しみだ」とテツが準備を始めようとするのを止め、
「悪い、テツ、あいつを葬ってやってくれないか」とアレクは死んだ一人を指した。
「わかりやした」とテツは死んだ者を担ぎ上げ、森の方に歩いて行った。セイガもその後を付いて行く。
夕飯が出来、一同はたき火の周りを囲んだ。
「ジル、サンガ、まだ紹介してなかったな。この子はヴィルヘルム。訳あって聖ピウス皇国から逃げてきた片割れだ」
「まあ、この子が。こんなに小さいのによく・・」
「えっと、ヴィルヘルムです。宜しくお願いします」
「ああ、ウィルから事情は聞いている。こちらこそ宜しくな」
「アレクさん、兄様は?」
「ああ、疲れて眠っているよ。寝かせておいてやろう」
「わあ、アレクのシチューだ。早くたべよう」
「わかったわかった。ほら、好きなだけ食え」とアレクは皿にシチュ-を取り分けてやる。
「まだ熱いぞ」
セイガはもどかしそうに皿の周りを回っている。
その光景に和みながらエルは渡された皿を取った。