149. トラップの調査 ④
ニキの街を出る際に、アレクは山羊2頭とそれを乗せる台車を買った。少し手直しをしてクロックに引かせる小型の馬車が出来た。
「何に使うんですか?」サンギは不思議そうに見ている。
「この後、街らしい街はないからな。2頭は実験のために連れて行くんだ」
「実験ですか。なるほど」
国境検問所も無難に通り過ぎ、かつて軍隊が駐屯していたという広場に着いた。
「今日はここで野営しよう。明日はいよいよ三叉路だ。ところでこの辺の森に魔獣はいるのか?」
「居ない訳じゃありません。でも、ホーンラビットとかかなり小さい奴ですね」
「ちょっとそれらも狩ってこよう。サンギは野営の準備をしていてくれ」と言ってアレクはズンズン森の中へ入って行った。
「魔獣なんて何をするんだ」と首を捻りながらサンギは野営の準備に取りかかった。
日も暮れかかった頃、アレクは2羽のホーンラビットを抱えてきた。2羽共生きている。但し、光の紐で拘束させられていた。
「うわあ、本当に捕まえたんですね。これも実験用ですか」
「ああ、調べたい事があるんだ」
翌日、昼前に三叉路についた。
「ここからどのくらい行くと、例の場所に着くんだ?」
「そうですね、向こうに見える森に入ったぐらいです」
道は真っ直ぐ見晴らしの良い草原を抜けて、森に入っていくのが見えた。
「よし、ではあの森の手前まで進もう」
程なく、森の手前まで来る。道は何の変哲もなく森の中を通っている。これでは旅人は警戒しながら森に入っていくことはないだろうと思えた。
アレクは土魔法でゴーレムを作った。ほぼ人間と同じ大きさだ。そのゴーレムに森の中へ行かせる。すると地面が白い光に覆われ、ゴーレムの姿が消えた。と同時にアレクは術を解く。
「やはりトラップが仕掛けられている」
サンギは目を丸くしてこの様子を見ていた。
「そうです、あの白い光。僕が見たのもあの光です」
次にアレクはホーンラビットを道に放った。ホーンラビット達は一目散に道を駆け抜けようとしたが、やはり白い光が出て、ホーンラビット達は視界から消えた。
アレクは考え込みながら、最後に山羊2頭を道に放った。山羊達は解放されたのが嬉しいらしく小走りに森へ続く道をどんどん進んで行った。何も起こらなかった。
「え、なんで」とサンギが声を上げた。遠ざかっていく山羊たちを唖然として見ている。
「これでハッキリしたな。こいつは魔力や魔法に反応しているんだ。いなくなった軍隊というのは魔力のある軍隊だったのではないか」
「そうです。消えたということから魔法が関わっているのではないかということで魔法が使える騎士を中心に組まれていました。僕の友人も身体強化魔法が得意で。そうか、僕が帰ってこれたのも魔力が殆どなかったからだったんだ」