146. トラップの調査 ①
その後、アレク達は王宮から馬車でジル達の店に向かった。
ジル達の店に入ると、大勢の人が出入りし何やら大きな荷物を搬入している。
「ああ、アレク、着いたんだね。サンギ、裏の馬車置き場に案内しておくれ」
「はいはい。アレクさん、こっちです」とサンギはアレク達を案内した。
「結局、馬車2台で熊族の国に行くことになったみたいです。義姉さん、張り切っちゃってあれもこれもと言ってたら、1台では到底運ぶの無理になちゃって」とサンギが苦笑する。
馬車の中からエル達が出てくると、サンギは目を丸くして、エルを見つめた。
「初めまして。アレクの弟子のエルです」
「ご丁寧に。僕はサンギ。サンガの弟です。しかし、美人だなあ。アレクさんも隅に置けない」
「馬鹿いうな。まだまだ子供だぞ」
「本当だよ。エルはこの間まで12歳の少女だったんだ。いきなり大きくなっちゃたけど」とセイガが言うと
「キュイ」とロンがポーチから頭を出した。
「えっ、えっ、竜族の・・・」
ロンが人間型に変身する。すると7歳くらいの子供が現れた。
「僕はロン。宜しくね」
「は、はあ、宜しくお願いします」サンギは完全に度肝を抜かれていた。
「早速だが部屋に案内してくれるか」とアレクは固まったままのサンギを促した。
サンギの案内で客間に着いた一行は古風な内装にしきりに感心していた。お茶を淹れながらサンギは「どうです、義姉さん、なかなか趣味いいでしょ?」と言うと、
「そうだな、ジルがアンティークが好みだとは知らなかった」と手に持った美しいカップを眺めた。
「ところで夕食はどうします?義姉さん達は手が離せないみたいで」
「さっき行った食堂でいいんじゃない?そこそこ美味しかったし」とセイガが言うとアレクも「ああ、そこにしよう」と頷いた。
「あの虎族の店ですか。なら僕もお供します」とサンギは尻尾をゆらゆらさせながら同意した。
夕食が済み、アレク達は部屋で明日からの段取りについて話をした。アレクは明日早朝からサンギと出かけること、エル達はセイガとロンと共に3日後、熊族の国に行くこと。アレクはサンギと共に『黄金の道』の調査が終わった後、熊族の国へ向かうこと。落ち合う場所は、熊族の国の首都ベアレス。場所はサンギがジルから聞いているとのことなので心配はいらない。という話でまとまった。
「じゃあ、おやすみ」とドアの方に行きかけて、睨んでくる紅い瞳に気付きアレクは振り返った。
「ん、どうした、エル?」
「なんでもない」と頭を振るも、「ちょっと不安で。今までずっとアレクと一緒に旅をしてきたから」
「またすぐ一緒になれるさ。確認したら俺もすぐ熊族の国に向かう」
「そうだよ、エル。僕もロンもいるし大丈夫さ」とセイガ。
「うん。気をつけて行ってきてね。アレク。おやすみなさい」