143. トラップからの帰還者 ②
王宮前広場から南の商業地区までは広い大通りが通っており、いろいろな店舗が軒を連ねていた。だがしかし、通りを行く人はまばらであり、馬車もたまにしか通らない。さすがに王宮の北側で見た、通りで寝転んでいる人の姿はなかったが、『活気のない街』の異名通り活気がなかった。
「ねえ、エル大丈夫かな」とセイガはアレクを見上げた。
「そっとしておいてやろう。いろいろ思うことがあるのだろう。なんといってもまだ精神的には12歳の少女のままなのだし」
「そうだね。体だけはいきなり大きくなっちゃたけど、心はついていってないよね」
「ああ、それに同胞のこともあるだろう」
「うん・・・」
「ところでセイガ、大通りをずっと歩いて来ているが奴らの家は本当にこの近くにあるのか?」
「わかんない。でも、商売をしているんだからこの近くにあるのは間違いないよ」
「そうだな。ああ、あの飯屋に入って情報収集するか」とアレクは一軒の飯屋に入って行った。
「いらっしゃい」と奥から大柄な虎族の男が出てきた。
「今日のおすすめ定食を二つ頼むよ。でも昼時だってゆうのに客が少ないねえ」
「味が悪いってわけじゃないんですよ。でもこのご時世じゃどこの店もこんなもんです」
「ところで、ジルって奴の店知らねえか?旅の途中で会ったんだが」
「この先2ブロック行った角に『ジル&サンガ商会』がありますぜ」
「あ、そこだ」
「ありがとう。早いとこ食って行こうぜ」
アレクとセイガは出された定食を一気に平らげ店を出た。店の親父が言った通り味はまあまあだった。
「ああ、ここだここだ」とセイガは尻尾を振ってアレクを呼んだ。
なかなか大きな店構えに『ジル&サンガ商会』と書いてある。
アレクとサンガが店に入ると、猫族の女の子がすぐにやって来た。
「いらっしゃいませ。なにかご入り用ですか」
「うん、ジルとサンガに会いたいんだけど」とセイガが言うと
「社長は今、用事で外出してますが」と意味ありげに彼らを見た。
すると、大柄のヒョウ族の男が現れて「社長にアポはとっていますか」と聞いてきたので
アレクが「いや、旅の途中で会って・・」と言いかけるとその男が
「もしや、神狼様のご関係のかたですか」と興奮したように言った。
「その節は内の社長達が大変お世話になったと聞いています。すぐ呼びにやりますのでこちらで少しお待ちください」と言って、奥の居間に彼らを通した。
「私も貴方達にお会いしたかった」