142. トラップからの帰還者 ①
セイガは会議が終了すると、アレク達が割り当てられた部屋に向かった。扉を開けると、アレク達は思い思いに寛いでいた。
「セイガ、どうだった?」とエルが聞くと
「うん、熊族のベアトリス殿に決まったよ」
「まあ順当なところだな。蛇や鳥は聖ピウス皇国からは遠いし」
「熊族の使者は明後日に帰るそうだ。僕は使者と共に熊族の所へ行かなければならいけどいいかな?」
「勿論、俺達も付いて行くよ」
「そう言えば、あの途中で拾った三人組はどうしたの?」
「彼らは自分の家に帰されたそうだ」
「ふ~ん、ねえ、彼らの家に行ってみない?」
「そうだな、サンガの弟に会って話を聞きたいし」
「じゃあ、決まり。善はいそげってね」と言ってセイガが走り出した。
「おい、待て。お前、あいつらの家の場所知ってるのか?」
「行けばどうにかなるよ」
王都レグルスは北側と東側に貴族街があり、南側に商業地区、西側街道筋には宿屋などが並んでいる。
「いやあ、本当にまいったね。私らも王宮に連れていかれるとは思わなかった」
「あの坊主があの例の薬の変な物を投げて、俺達も含めて皆やられちまっているのにアレク達はピンピンしてたな」とテツが言うと頷きながらサンガも
「そうだな。俺達にしか効かないって本当だったんだな」
「何はともあれ、やれやれさ。こうして帰ってこれたんだから」とジルは安堵の溜息を吐いた。
彼らはレグルスの南側の一角にある『ジル&サンガ商会』の居間で午後のお茶を飲んでいた。
「今回は大赤字だったけど、命あっての物種だよ」
「一時はこのままのたれ死ぬんじゃないかって本当に思ったぞ」
「竜人国は閉鎖されちまってるし、これからどうしようか」
「俺は思うんだけど、熊族が次の王様になるだろうから商機があるな」とサンガが言うと
「そうね。急いで食料や小物を集めなくっちゃ」とジルが応じた。
居間の扉が開き、一人のヒョウ族の男性が現れた。
「お帰り、兄さん,義姉さん、テツさん」そしてくすっと笑い
「ひどい目に遭って帰って来たと思ったら、今度は熊族の国に行くって?懲りないね」
「なんだサンギ、居たのか。ああそうだ、お前に会いたいって人が居るんだ」
「へえ、誰、その人」
「神狼様とそのお付きの人さ」
「何だって?なんでそんな人が僕に会いたいんだ?」
「ほら、お前物好きにも軍隊の後をついてあの道に行ったろ?軍隊は消えちまったけれどお前は運よく帰ってこれたじゃないか。その時の話が聞きたいそうだ」
「ふ~ん、まあいいか。神狼様なんて滅多にお目にかからない方だしな」
その時アレク達は王宮を出て、南側の地域に向かって進んでいた。