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141. 王権の行方

 執務室の中でさらさらとペンの小気味よい音が続いている。


「教皇様、昼食のお時間です」近くに居た神父が教皇にそう告げる。


教皇はふと顔をあげ「ああ、もぅそんな時間か」とペンを置いた。すかさず周りに居た神父が昼食の用意を始める。近くのソファに座った教皇の前に簡易な昼食が並べられた。彼は1つ手に取り咀嚼する。味は分からない。いつからだったろう。己の味覚がないことに気付いたのは。彼はただ咀嚼し続けた。一人の神父がグラスに並々と赤い液体を注いできた。彼はおもむろにグラスを傾け一気にそれを飲んだ。その途端、彼の乾きは一気に癒やされる。至福の時だ。グラスを空にするとまた赤い液体を注がれる。


「本日は10歳の少女の新鮮な血を絞りました」


「なるほど、うまいな。だがやはり直接飲むのが一番だ」

「御意」

「ところで・・・」いいかけた所で、途端、彼は苦しそうに胸に手をあてた。

「教皇様!いかがなされました」周りの神父が慌てて近寄ってくる。


彼は手でそれを制し、「私はなんでもない。だが、ルカ司教になにか遭ったようだ。ペレスにいる枢機卿と司教達を大至急集めてくれ」


ザビエル教皇は神父達が出て行くと大きく溜息を吐いた。

「真祖様が現れたのかもしれない」





獅子国王と重鎮達及び各国使者達の合同会議が開かれたのは次の日だった。皆、疲れた顔をしていたが早急に決めなければならないことが、山とあった。


「獅子国王レオポルド様、獣人国の王権は熊族王のベアトリス様へ移されてはどうか?」

「いや、我が種族の王がふさわしい。空から聖ピウス皇国を監視できる」

「何をいっている。我が種族が・・」


獅子国王達は苦虫を噛みつぶしたような顔をしている。彼らとてこの情勢をみれば自分達が獣人国の代表だとはとても言い切れない。あの忌々しいマタタビが彼らの信用を失ってしまった。


使者三人の争いを見ていたセイガが一声吠えた。

「いい加減にしろ」

三人はピタリと言い争いを止めた。

「争っている場合ではないだろう。今は早急に聖ピウス皇国に対処しなければならない。僕は思うんだけど、今回は熊族に任せてみてはどうか?」

「それは・・」後の二人が反論しようとするのを制して

「聖ピウス皇国と国境を接しているのは獅子族と熊族だ。今回、獅子族に致命的な欠点が見つかった。であれば熊族で良いのでは無いか。民の危機感も格段に違うし」


これには二人の使者も反論できない。聖ピウス皇国の恐ろしさを身を持って体験した彼たちには争っている場合ではないことがよく理解できたし、国境を接しているという危機感が自分達の国より余程強いだろうと想像できたからだ。


「我々は神狼(フェンリル)様の意見に従います」と使者一同は答え、獅子国王側も了承した。


その後、セイガは熊族の使者を呼び、セイガ達一行も同行する旨を伝えた。

























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