140. 残された冒険者達
国王達が去った後、アレク達と冒険者達が残された。
「ここにいてもなんだな・・・一杯飲みに行こうか」とアレクは辺りを見廻しながら冒険者達に言った。
「ああ、ここにいると気が滅入るし、腹も減った」とベンが同意した。
正教会を出て、少しいくと手頃な酒場があった。
獣人の店主は聖騎士達の鎧をきている冒険者達に驚いていたが構わず入る。
「今日は俺のおごりだから構わず飲んでくれ」とアレクが言うと、冒険者達は遠慮無く酒やつまみなどを注文しだした。
「お前らに聞きたいことがある。何故、聖ピウス皇国の騎士なんぞになった?」
「そりゃあお前、なりたくてなったわけじゃねえんだ」と冒険者の一人が言った。
「俺ら黄金の道を真っ直ぐ進んで行ったら、聖ピウス皇国に知らない間に着いちまったのさ。森の中を通っていたのにいきなり街の中に出て俺達がとまどっていると、聖騎士の奴らが出てきて王宮前広場に連れて行かれたんだ。で、そこで職業選別をするってんで俺達は冒険者だっていったら、組み分けさせられて互いに戦わせられたんだよ。で、勝った俺らは聖騎士にしてやるっていうんでそれに乗った訳さ。勿論いやだという奴もいたさ。でもそいつらとうなったと思う?奴らの一人がそいつの首に囓りついて血をすすったのさ。そいつはみるみる内に干からびちまいやがった。恐ろしかったね」と言って、手に持っていた酒をぐっと煽った。
「あいつの言うことは本当だ」とベンが同意する。
「俺達も黄金の道を真っ直ぐに進んだろう?森の中からいきなり聖ピウス皇国に出たんだよ」
「で、見せしめかわからないが一人を選んで血を啜って干からびさせて俺らは恐怖で従わざるをえなかった」ザキは思い出したように身を震わせた。
「で、獣人国に行けって言われてここに来た。他の奴らのことはわからねえ。負けた奴らは聖騎士の餌食になったか奴隷にでも落とされたか。ここでは食事にはありつけたが、給金なんてでやしねえし。いわば飼い殺しってやつだ」リブロが吐き捨てるように言った。
「あの『黄金の道』ってやつも食わせ物だぜ。俺達をはめる罠だったのかもな」
「そうとも言い切れんがな。聖ピウス皇国が途中にトラップを仕掛けたってこともあるし」とアレクが言うと
「俺らはまんまとそれに嵌まったってことかい?」
「何にせよ、聖ピウス皇国は許せないな。お前ら獣人国が聖ピウス皇国を攻めると決断したら力を貸してくれるか?」
「俺達はアレク、あんたについてくぜ」と暁の稲妻のメンバーは即答したが、残る三人の冒険者は
「俺達はごめんこうむる。秋分点まで待って、国に帰るよ」という返答だった。今回のことが余程堪えたのだろう。
「まあ、選択は人それぞれだ。今日は好きなだけ飲んでくれ」