14. ペンダントの記憶 ⑥
「エル様、エル様」
「う、う~ん。あ、マリー。え、あっと、体が動く」
「やはり、お疲れなのでしょう。さ、パン粥をお持ちしましたよ。冷めないうちに召し上がってください」
「ありがとう。ねえ、マリー、魔法使いって知ってる?」
「おとぎ話の中でですね。人間は魔法は使えません。魔石に魔力を通して魔導具を作ることはできますが」
「でも、エルフや獣人とかは使えるんでしょ?」
「エルフも獣人も、今はいません。言い伝えによれば『魔の森』先に彼らは住んでいるといいますが」
「魔の森かあ。不思議なところだね」
「だから春分点・秋分点には大勢の人がこの街に集まってくるんでしょうね。さ、食べ終わったらゆっくり休んでくださいね。体調が回復したら忙しくなりますよ」
「うん、おやすみなさい」
エルは再びベッドに横になった。ペンダントを握りしめて
シンとユイは殺伐とした街道を領都ゴランへむけて歩いていた。道の両側には荒れ果てた畑が続いており、人っ子一人いない。
遠くの方から一台の荷馬車がやって来て、二人の前で止まった。
「よお、お前さん達は領都に行くのかい?だったらこれに乗って行くかい?領都までまだ3日はかかる道のりだよ」
「ありがとう。助かるよ。(後方を示し)この先の村によったら、廃村になっていたし」
男は渋い顔をして「ああ。ひでえ話さ。税が払えないっていってじじばば皆殺しにして若いもんは奴隷か鉱山送りだろ。ここらの村は明日は我が身ってんで戦々恐々してるんだよ」
「ところで僕はシン。彼女は僕の奥さんでユイ。よろしくね」
「俺はヨハン。荷物を隣国まで届けた帰りだ。しかし女連れたあ物騒だ。この辺りは農民崩れの野盗がごろごろしてる。あんた、腕に自信があるのかい」
「ああ。といっても魔法の腕だけどね」
「魔法?きれいな顔してると思ったが、エルフかなんかなのかい?」
「いいや違うよ。でも僕も奥さんも魔法使いなんだ」
「へえ、そりゃあ心強い。ああそうだ、それなら一つ寄り道していいかい?実はある村で薬草を採ってきて欲しいと頼まれていたんだが、村の近くに野盗の巣があってなかなか行けなかったんだよ」
「勿論、かまわないよ」
「ありがてえ。じゃ、行くか」