139. ルカ司教の最後
アレクは聖魔法を剣に込めた。セイガも聖魔法を己自身に纏わせる。
「行くぞ」と同時に結界が開いた。同時にアレクが人工生命体に斬りかかった。振りかぶっていた手が宙に飛んだ。セイガも尾っぽの蛇に食らいつきその頭を噛みちぎる。
「ぎゃおうううう」苦しそうな声を上げて人工生命体が後ろに飛んだ。聖魔法で斬ったためか再生に時間がかかっている。同時に食いちぎった蛇の頭もそのままだ。人工生命体はおもむろに翼を広げた。空中からの攻撃に切り替えたらしい。
「ケケケエエ」鳥頭が叫びをあげて宙を飛びアレクに襲いかかる。アレクが転がり避けたところでセイガが鳥頭に飛びつき、かぶりついて引っこ抜く。
「ぐあああああ」と人工生命体が血まみれで着地したと同時にアレクの剣が胸の魔石を貫いた。
「・・・・・・」
人工生命体は貫いた箇所から灰になって消えていった。
「そんな、そんなあああ」 ルカ司教が絶叫をあげた。
「我々の努力の結晶が。皇国の希望がああああ」
「ルカ司教」エルが静かに言った。
「貴方がこの国の人々にしたことは到底許される事ではありません。聖ピウス皇国もです。獣人の皆様、この者達の処分を私に一任させて貰えませんか?」
「レオポルド殿、この者達はヴァンパイアという種族でその方らでは処分できない」とセイガが言うと
「処分出来ないというのは?」
「こいつらは厄介な奴らでな、首を切っても再生してしまうんだ」
国王は「試しに誰かこの者をきってみろ」と近くの騎士に神父の一人の首を跳ねさせた。が神父の体はたたらを踏んで立っている。その内、跳ね飛ばされた首を持って帰り頭を装着した。
「この通りだ」
「化け物め」国王は苦々しげに吐き捨てた。
「わかった。この者らの処分はエル殿に一任しよう。皆もそれでよいな」
獣人達がコクコクと頷く。
「エル様、お助けください。我々は司教の命令で動いていただけです」と神父の一人が懇願すると聖騎士達も懇願しだした。当のルカ司教は放心したままだ。
「安心なさい。皆一緒に一瞬で終わりにしてあげる」と言い、現れたペンダントを握りしめた。
教会内に眩いばかりの赤い光が満ちあふれる。
光が収まった時、ルカ司教や神父、聖騎士達の姿は無く、うずたかく積もった灰がそこにはあった。
「・・奴らは灰になったのか・・・」呆然とする獅子国王にエルは頷いた。
「レオポルド殿、しっかりなされよ。集められた獣人達のケアも勿論だが、この国の現状も早急になんとかしなければならん。三人の使者と共にすぐに協議を始められよ」
「神狼様、エル様そして皆様もありがとうございました。おい、捕らわれていた獣人を王城へ連れて行き手厚い看護を。それから、大至急大臣達を集め協議に入るぞ」
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