13.ペンダントの記憶 ⑤
魔方陣が光り二人はそこからでてきた。見渡す限り広い草原には誰もいない。
「僕が前に確かめに来たときはちょっと先に小さな村があったんだ。といっても何年前だったかなあ」
「あなたの何年か前って何十年前の間違いじゃない?本当、時間の感覚がおかしいんだから」
「よく言うよ。君だって僕の伴侶になってから時間なんてあってないようなものだろ?」
「ふふふ、それは否定しないわ」
「取り敢えず、あっちの方へ行ってみよう」
二人は丘を下り街道にでた。少し進むと村らしきものが見えてきたが、一向に人影が見えない。それどころか、かつて畑であった荒れ地がどこまでも続いている。さらに近づくと、そこには朽ちた家々と白骨死体があちこちにちらばっていた。
「これはひどいね。何があったんだろう。ちょっと聞いてみようか」
シンが手をかざし呪文を唱えると次々と白骨死体が集まってくる。
「君たちに聞きたいんだけれどこの村はいったいどうなってしまったのかい?」
白骨死体の上にゆらゆらと幽体が現れ
ーーー領主様に税が重くて払えないと訴えたら、城の兵士がやって来て若いもんは鉱山送り、女子供は
奴隷にされ売られていったよ。わしら年寄りは役立たずだと皆殺しにされた。
「前来たときはのどかでいい村だったんだけどなあ」
ーー3年前に王様が代わってからひどいもんさ。前の領主様はそりゃあ皆のことを考えてくれる良いお人 だったが、今の領主様に代わってからは税は重くなるし見目のいい子は無理矢理連れて行かれて慰みものにされてたよ。自殺した子も一人、二人ではないしな。
「そうか。その領主様っていうのはどこにいるんだい?君たちの他にも同じような目に遭ってる人がまだ大勢いそうだ。なんとかしなきゃいけないね。あと、君たちも恨みを残してここに留まってはいけないよ。僕がなんとかするから、心安らかに輪廻の輪の中に還るんだ」
そうすると、幽体達はゆらゆらゆれながら領都の方角を指さし、そして拝むような仕草をした。
シンは浄化の炎で白骨死体全てを燃やし尽くした。
「なんだか忙しくなりそうね」
「でも、このままにしておくことはできないだろう?」