12 .ペンダントの記憶 ④
ふと気が付くと、エルは自室のベッドの中にいた。辺りはもう薄暗くなっている。右手にはしっかりと紅玉のペンダントを握りしめていた。起き上がりマリーを呼ぼうとして手近のベルに手を伸ばしたところでノックをしてマリーが入ってきた。
「やっとお目覚めになられましたか」
「ボク、いったいどうしちゃったんだろう」
「あなたが倒れているのをエミリーが見つけ、大急ぎでジョンを呼んで寝室に運んだんですよ。お医者様に診てもらったところ看病疲れではないかとのことでした。でも、目を覚まさなくて、丸一日半お休みになっていらっしゃいました」
「そうだったんだ。お腹すいたな。何かもってきてくれる?」
「消化の良いものをご用意しましょう」といっってマリーは微笑んで部屋を後にした。
エルは握っていたペンダントを首からかけ、紅玉をしげしげと眺めた。紅玉はキラキラと光を反射して輝いていたが何も起きない。いったいあれは何だったのだろうと思いを馳せていたときだった
「・・っつ」全身に走る痛みに声をあげるが声になっていない。自分が自分でなくなったような感覚に恐怖がせりあがってきた。と思う間もなくまたあの場面が目の前に展開していた。
「シン、ほら見て。この魔術式をこう組み合わせると魔力の出力が大分減らせるわ」
「流石だな、ユイ。君は本当の天才なんだな。魔術を教えてそんなにたってもいないのに」
「あなたのお陰げよ、シン。何も知らない私をここまで導いてくれたのはあなたよ」
「それじゃあ、行こうか。この先のラルフ王国には魔石がある。それに海にも面しているからエルドラドへ行くにはちょうどいい。準備はできたかい?」
大きな魔方陣が現れ二人はそれに吸い込まれていき、洞窟は錠で閉じられた。